闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

『改革者』2002年4月号特別インタビュー「21世紀の日本が求める民主社会主義」

3ページ

■「簡素で分かりやすい、安上がりの」政治

 小渕元首相の時、私は予算委員会で、行革とは「簡素で分かりやすい、安上がりの」政治を行うことだと、そういう問題意識で質問に臨んだことがある。  
 「あなたは、国家公務員をどの位の期間で、どの位削減するのですか」と、端的に申し上げた。小渕さんは、「10年間で3割減らします」と明確に答弁した。「経費は?」という質問にも、「経費も3割滅らします」と明言した。具体的に、「簡素でわかりやすいとは、どういうことか」と、さらに追及したら、小渕氏は「地方分権をします」と。そこで私が「地方分権とは、権限と財源をセットにして渡すことですよ」と申し上げた。彼は「その通りです」といっておきながら、未だに、権限は渡したが、財源は渡していない。それが実態だから、ますますわかりにくくなってしまった。
 小泉首相は色々な形で「聖域なき構造改革」を掲げている。昨年5月の衆議院経済産業委員会で、私が質問したときに、「もう特殊法人を全部ちゃらにしなさい。役割の終わったものは無くしなさい。民営化出来るものは民営化しなさい。どうしても国がやらなければいけないものを、独立行政法人として残しなさい」と。このことを私は5年間言い続けてきている。特殊法人廃止の必要性については小泉さんもわかっているわけだが、現実には何もしていない。

■政官業のしがらみに縛られる自民党

 特殊法人はみな、民営化どころか、足して2で割ったり、3で割ったりすることを考えている。自分たちの生き残りのことしか考えていない。日本道路公団を廃止すると言っても、現実には廃止できないだろう。国民金融公庫、あるいは都市基盤整備会団を廃止するといっても、恐らく難しい。石油公団を廃止するという。なくなるかもしれない。しかし他とドッキングさせようとしている。独立行政法人として実質的には残すわけだ。また、国公立の研究機関や大学は整理統合する。それも独立行政法人にしなさいということだ。
 独立行政法人というのは、国が面倒を見るのではない。国はある一定の補助はするが、基本的にはまず自分たちで稼いで、自分たちで経営をするということだ。これからは日本の人口は確実に減少に向かう。それは税収が少なくなるということだ。そうなったときに、この国を運営するにはどうしたらいいか。まず無駄を削らなければならないわけで、補助金など出せない。ODAを見ても、バラ撒きだ。何故経済成長8%の中国に、マイナス成長の日本が補助金を出さなければならないのか。そして日本から行ったお金を、中国はまた他の国に援助している。日本では皆、リストラを余儀なくされた上で、やっと税金を払っている。このことをもっとよく考えなければいけない。
 国民の支持を獲得できる政策を、思い切って断行しなければならない。これは体を張ってやっていく。自民党と違って我々にはしがらみがない。自民党は、政官業のしがらみのなかで、手足をしばられ本当に何もできない。我々に「しがらみ」があるとすれば、それは、国民との関係であり、約束事だ。国民が今求めていることにどう応えるか、国際社会のなかで責任ある対応ができるか。こういうことではないかと思う。これが「政研21」の政策研究の大きな課題であると受け止めている。

■人間主義・合理主義・理想主義

 ヨーロッパの主流は民主社会主義である。一時はEU15ケ国中13ケ国で、民主社会主義の政党が政権についていた。今は多少その数こそ減っているが、イギリス、フランス、ドイツと、主流を占めていることは間違いない。
 この大きな思想の背景をかみ砕いて言うと、人間主義、合理主義、理想主義の3つだ。これが21世紀に最も求められていることだと思う。日本が民主社会主義のそういった思想に基づいた政策を今やらなければ、世界から見放されてしまう。それを私は心配している。民主社会主義という理想を、若い人達に教え、共に学んでいくことが必要なのだ。
 民主社会主義という基本理念は世界の主流になっていくだろうと思っている。また、福祉という国家目標を、時代にあわせた内容に形づくっていかなければならない。

■民主社会主義の国家像

 福祉とは、多くの人が共に助け合う社会をつくることだと思う。例えば、生涯現役で働くということ。なにも60歳、65歳の人達が、8時間働かなくてもいい。4時間でもいい。そのことで、健康維持ができ、社会参加をしているという意識が生まれ、働き甲斐、生き甲斐につながっていく。日本が高齢化社会のなかで、何故今サラリーマンの医療費が3割負担なのか。予防医学を含めて、元気に社会参加をしてもらえれば、医療費の削減につながる。今まで、何十年も積み上げてきた技術や能力を社会に還元してもらえば、製造業の空洞化防止にも、失業対策にもつながる。そして、優れた技術を後輩に受け継いでいくことができれば、こんなに素晴らしいことはない。
 また、いつでも、どこでも安心してかかれる医療が必要だと思う。私は、医療が先ではなく、健康づくり・国づくり、それが先に来なければならないと思う。その上で、何かの時に、いつでもどこでも安心できる医療を提供する。日本の将来はやはり、こういった福祉国家を前提にしていきたい。
 もう1つ、日本にはどうしても島国気質が根底にある。いわゆる一国平和主義というのはその象徴だ。私は「One for all, all for one」といつも言っている。「一人は世界のために、世界は一人のために」と。国際社会との協力・協調のできる、日本を構築していくこと。それが民主社会主義のあり方だと思っている。
 また日本は資源の乏しい国だから、ものづくりということを絶対忘れてはいけない。原料を輸入し、技術を生かして、良いものを造って世界に発信することが必要だ。ものづくり精神を大切にして、高度で付加価値が高く、世界が真似のできない製品づくりを目指すことが、日本を再生させる究極の道だと思っている。そんな社会環境を私たちは全力を挙げてつくり上げていかなければならない。

『改革者』2002年4月号特別インタビューより転載