闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

国政リポートNo.521
2008年12月15日

 

 気候変動による集中豪雨が河川の氾濫などで被害をもたらし、このためにダムを増やそうとの構想がでています。これは間違いで税金のムダづかいです。日本の国土はその7割が森林。間伐や枝下ろしなど、森林の手入れを怠ったために雨水が地中に浸透せず鉄砲水となって斜面を流れ落ち、一挙に河川に注ぎ込んで大きな被害をもたらしている場合が多いのです。ダム建設には莫大な税金が必要で、森林の管理をキチンとすればダムの必要性は限定的となってきます。とにかく官僚のムダづかいも公共事業のムダも1円たりともストップしていかなければならないのです。

 

◆税金のムダは1円たりとも許さない

 政府の地方分権委が出先機関3万5000人の職員削減目標を示しました。とにかく税金のムダを省くことです。私たちは役人の12兆6000億円のムダづかいを指摘しています。ムダとわかっていながら平然と行われる天下り。地方自治の独自性を阻害する骨抜きの地方分権。省庁ごとに地方に置かれた出先機関の二重行政など、とにかくムダ。これらを廃止していかなくてはなりません。
 景気対策も地方分権も、今の麻生総理では実現不可能です。支持率20%の急落は国民が不信任を突きつけたと同じこと、末期症状といっても過言ではないからです。国民の暮らしを第一に元気な日本をつくらなければなりません。総理はその座を投げ出すことができても、国民は社会生活、家庭生活を投げ出すことはできないのです。

 

●遅すぎる総理の決断

 世界の同時株安、金融不安、円高で景気は底なし状態に陥っています。その結果、自動車、電気の製造業にとどまらず、不動産などあらゆる分野で失業者がでています。その数は、非正社員の契約解除など3万人以上。関連の下請け孫請け、輸出後退の影響を考えると今後100万人近くが職を失うのではないかと懸念しています。しかし、その対応が遅れています。今の制度では非正社員は雇用保険などの労働基本権もなく、人よりもモノ扱い。年の瀬を迎えて厳しさは火を見るより明らかです。当然ながら、この人たちの生活手当、雇用のための企業への支援、そして新卒者の内定取り消しに対する法規制などが必要です。政府に対し、私たちは早急に有効な手立てを講じるよう提案をしています。
 迷走を続ける麻生総理は「政局より政策」といいながら具体的な施策も実現性に乏しく、小出しのやり方は緊急経済対策に値するものではありません。
 先週末、総理は総事業規模23兆円の生活防衛のためと称する追加の緊急経済対策を発表しました。しかし、これも見せかけの数字枠だけなのです。「消費税をタダにしろ」との声もあるように100年に1度といわれる緊急事態なら、内需拡大につながる100年に1度の思い切った景気対策を打つべきです。官僚のつくった数字合わせの景気対策ではなく、実態経済に即した一刻も早い効果的施策の実行を強く望みます。

 

 

●踏みにじられた二院制国会

 企業の倒産件数は昨年比でみても大幅増となり、今後自殺者も増えるのではと心配です。この状態を受け、延長国会で中小企業などへの貸し渋り対策として金融機能強化法案が成立しました。政府案はすべての銀行に公的資金を注入できるものになっています。これに対して民主党案は、中小企業への貸し出しよりも投資業務に重きをおいた農林中金、ずさんな融資が表面化した新銀行東京を対象外とする修正案を提出しました。資金を円滑化するために強化法は必要です。しかし問題のある銀行まで税金を注入することには反対です。
 同時に、テロ特措法も可決し自衛隊によるインド洋での給油活動の延長が決まりました。昨年のテロ特措法延長では、6年間の給油活動に300億円以上の税金が注ぎ込まれ、この油を日本の商社がアメリカから買い付け無償でアメリカ艦船に給油していたことが明らかになりました。また、使われ方が不明瞭で海上自衛隊の日報も破棄されるなど、多くの問題を指摘したのは僅か1年前こと。これを忘れてはならないのです。
 国会への報告義務も不十分です。空輸を継続していた航空自衛隊がイラクから撤退を決めたように、アフガン支援に対する自衛隊による貢献、日米関係など、外交、防衛を含めた国際貢献のあり方に知恵をだして考え直していくときだと思います。
 一方、参議院で否決された両法案が、ともに衆院本会議での3分の2の多数によって1日のうちに再可決されたことには問題があります。衆院の3分の2は、3年前に小泉郵政選挙によって「イエスかノーか」の二者択一だけで選ばれた議員数。これに対し、直近の民意によって選ばれた参議院の意思がまったく反映されない国会となっています。これでは二院制による議会制民主主義に意味はなく、この状態はまさに危機的国会といえるのです。
 優柔不断の迷走総理、強権国会の危機によって社会不安が日々高まっています。これを変えていかなければ日本の政治も経済も暮らしもよくならないのです。