景気悪化が懸念される中、麻生総理は3年前の郵政解散と同じように、民主党が第2次補正予算に反対すれば世論の支持が得られると、衆院選が有利に働くタイミングを見計らっています。
総理は「政局より政策」と、追加の補正案をまとめました。この中には当初主張していた定額減税にかわる定額給付金が含まれています。1999年、同じように7000億円規模の地域振興券が配られましたが、使われたのは3割ほど。殆どが貯蓄や借金返済にまわってしまい経済効果は得られませんでした。1回だけの定額給付では無理です。経済対策に必要なのは目先の政策ではなく長期的な取り組みです。将来にわたり、安心して消費の拡大につながる恒久的な定率減税の復活こそが望ましいのです。
景気イコール消費です。日本経済の6割が個人消費で支えられています。消費を活発化する環境づくりこそが景気対策につながります。ところが政府・自民党案はその場限り。継続性に乏しく、却って消費を萎縮させるものばかりなのです。
●3年後には消費税をアップ
今、民主党で主張している高速道路の無料化は、実は私が現職のとき座長としてまとめ上げたものです。なぜ私が無料化を提言してきたのか。それは昭和29年、戦後の道路整備が必要だと、受益者負担ではじめた道路特定財源が、必要性のなくなった今も続いていること。自動車購入時に取得税、重量税、登録税と地方税を合わせて7種類の税金が賦課されていること。また、ガソリンには二重課税されていること。これらを考え合わせれば高速料金の徴収は既にその役目を終えているはずです。景気対策、物価対策のためにも無料化すべきなのです。
政府・自民党では世論の動向を政局に絡め、高速道路の夜間料金の大幅割引きや一般車の地方の高速道路料金の土、日曜、祝日の一律1000円などを打ちだしました。しかし、これではETC対象外の車や平日に物流を担うトラック運送業界などへの対応は不十分なのです。
当初は難色を示していた住宅ローン減税にも踏切り、証券税制も、そして金融強化策に10兆円の公的資金を確保したり、また貸し渋り・貸しはがしに中小企業向けの信用保証枠を拡大していますが、結局は3年後にマイナス分を穴埋めするための消費税アップに言及。増税とだき合わせの景気対策では、せっかくの減税にも国民の財布のひもは固くなるばかり。国民受けを狙った人気取りのチグハグな対策ばかりなのです。
●埋蔵金の存在認めた政府
ガソリンの暫定税率廃止は減税効果が期待でき、景気対策には是非必要です。ところが政府・自民党は「財源をどうする」と迫ります。私たちは特別会計の積立金など、いわゆる「霞ヶ関の埋蔵金」などから捻出できると考えています。これに対し、当初は埋蔵金の存在を否定していた総理ですが、結局は追加予算の中で赤字国債を発行せずに埋蔵金に頼ることを明らかにしました。その存在を公に認めることになったのです。
民主党は特別会計の一般財源化と天下りや特殊法人を全廃することによって税金の無駄づかいをなくし、行政の仕組みを変えていくことが景気対策につながると考えています。年金、医療、介護の社会保障を明確に示し、将来にわたり不安を払しょくすることもまた、大切な景気対策だと思っています。
●政局で動く総理の政策
1989年には、3万9000円台をつけていた日本の株価は、バブルが崩壊してから下がり続け、今回は世界規模の金融危機とは言え、一時7000円台にまで落ち込んでしまいました。その間の大企業の利益は10倍にもなっているのに、賃金はマイナス20%と下がり続けています。サブプライムの焦げつきで混乱を引き起こした張本人のアメリカですら、この10年間で株価下落は半分程度。賃金に至っては、殆ど変わっていないのです。自民党政権下、大企業中心の政策が今日の格差社会をつくりだしてしまったのです。
小泉さんはグローバルスタンダードの名のもとに市場万能主義を打ちだし、改革を進めてきました。そして、改革の本丸は郵政民営化だ。改革に反対するものはすべて抵抗勢力だ。自民党をぶっ壊す、と言いながら、実は日本をガタガタにしてしまったのです。行き過ぎた改革、弱者しわ寄せの政治を変えていかなければなりません。
総理が「政局より政策」と立派なことを口にしても、結局、政府の景気対策は私たちが前から提言してきたものばかり。総理が3人も替わり、役人丸投げの景気対策では表面を繕うばかりです。これが政局でなくして、一体何なのでしょうか。