闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

国政リポートNo.517
2008年10月20日

 

◆金融経済からモノづくり経済へ
 日本再生への独自の戦略を

 

●モノづくりの原点に立ち返る

 アメリカ発の金融危機で始まった世界同時株安は、日本経済にも深刻な影響を与えています。小泉総理当時にアメリカ型の自由主義経済を追い求めてきた日本市場は、今ではアメリカ発のサブプライム問題、リーマンショック(リーマンブラザーズ破たん)などとなってはね返っています。原因の発端は、もともと無理だといわれていた金融工学を駆使したサブプライムの証券化が崩壊したことによるものだったのです。このままでは、日本経済は混乱の渦から抜けだすことはできません。
 マネーゲームだけで1億2千万人の日本国民が生活できるわけがないのです。マネーゲームによって翻弄された日本は、その再生を考えたとき、歴史的にみても日本経済を支えた、産業や農業のモノづくりの原点にもう一度立ち返る必要があると思います。

 

 

●国内企業への融資を活発に

 日本ではバブルの崩壊から立ち直るために公的資金による銀行の救済とゼロ金利政策をとり続け、その結果、生き残りをかけた銀行など、金融機関は膨大な利益をあげてきました。そして今、日本はサブプライムの影響も比較的少ないからと、三菱や野村はアメリカの負債を引き受けることを発表しました。さらにはアジアやヨーロッパに向けての取り組みにも手をつけ始めています。しかしその前に、日本の金融機関が稼いだ利益は公的資金である国民の血税がつぎ込まれて生まれたもの。厳しさを増す国内企業、個人経営者にもっと目を向けるべきなのです。

 

 

●積極的な中小企業対策の見直しを

 医療現場の厳しさは命に関わる問題であり一番に対策を講じなければなりません。例えば千葉の病院が医師不足、看護師不足などで倒産しています。倒産は千葉の病院だけではありません。利益優先で儲かれば何でもありの市場原理主義を医療現場に持ち込んだことが、後期高齢者医療制度をつくりだし、あるいは診療報酬の点数引き下げによって3カ月を過ぎると、まだ治療が必要な病人までも退院させようとする、命の尊厳を顧みない事が平気で行われるようになったのです。
 今回のサブプライム問題を切っ掛けに、ハゲタカファンド、ヘッジファンドなど、儲かれば何でもありのマネーゲーム主流の考え方が日本の文化にはなじまないことを再認識する必要があるのです。
 中小企業に対しても同様、金融機関としてでき得る具体的な知恵が必要です。三菱UFJがモルガンスタンレーへの出資を発表し、キャッシュが振込まれたと聞いています。これだけの余裕があるならば、中小企業への資金供給をもっと手厚くすべきです。中小企業へ貸し渋り、貸しはがしをしなければ倒産、あるいは自殺者をださなくてもすむ事例がたくさんあるはずです。この点でも大企業、大銀行中心の金儲けに走る市場原理主義をもう一度見直す必要があると思います。

 

 

●ニート、ネット難民対策を可能に

 日本経済は自動車、電気など輸出産業に依存してきました。ハイテク分野でも高い評価を受けています。それが今、円高で大変な状況になっています。ここ数年、日本企業は生き残りをかけてコストの安い海外へと生産拠点を移してきました。しかし世界の工場といわれた中国の状況も変わって企業のUターンが始まっています。規制緩和、税制改正、流通システム改革などで、海外へでて行かなくても国内でもっとコストを下げることは可能です。
 日本では年収200万円以下の人たちが、もはや勤労人口の4分の1近くを占め、格差社会の拡大が問題となっています。雇用と労働者のミスマッチが続いていますが、企業のUターンをニートやネット難民対策に役立てていくことができるはずです。老朽化した公営住宅をもっと安価に提供するなど、法律的な問題を解決してネット難民の救済策につなげていくことも可能になると思います。

 

 

●政策の転換で日本再生を

 化石燃料から、太陽光、風力などの自然エネルギーと環境政策をリンクさせた分野への思い切った転換と補助政策をとる。また、安全性を確保した上での原子力政策もあります。特に水素エネルギーの実用化は国を挙げて取り組むべき課題です。また、昼夜の電力使用量を効率的に活かすためのバッテリーチャージの方法を考えれば設備容量も少なくてすみ、経済効率を高めることが可能です。このようなことにも、日本は世界に先がけて積極的に取り組んでいく必要があります。
 アメリカの金融危機を機会に、あらゆる分野の見直しをする、そういう時代にきていると思います。政策の転換で新たな活力を見いだし、独自の技術で日本経済の再生を図っていくべきだと思うのです。