闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

国政リポートNo.509
2008年6月30日

 北朝鮮が核計画申告の見返りにテロ支援国家から指定解除されようとしています。しかし申告内容は核兵器や核拡散の問題に触れられず不十分。功をあせるブッシュ大統領の足もとを見透かして、北朝鮮の思惑通りにことが運んでいます。福田総理も成り行き任せ。拉致はテロ。日本は拉致解決に立ち向かう強い姿勢を国際社会に発信し続けていかなければならないのです。

 

◆景気対策、物価安定に全力で臨め

  日本経済は近来にない最悪な状況です。求人倍率は増えず、非正規雇用も倒産件数も増加のまま。自殺者も10年連続3万人を超え、3万5、6千人になるのではと予測しています。高止まりの原因は不況、リストラ、貸し渋り、多重債務など、何らかの経済苦が未だに続いているからです。そしてこれらを起因とするウツ病、ストレスなどの病気が自殺の大半を占めています。景気に左右されているのです。
 このような中、景気を後退させる原油の高騰が日本ばかりか世界中に大きな影響を与えています。地元横浜でも飼料の高騰などで人件費を削るために朝3時起きで仕事にあたる夫婦二人の酪農家があります。廃業せざるをえなくなった養鶏農家もあります。国が何もしてくれないからと廃業は苦渋の決断であり、負債をこれ以上増やさないための最善の防衛策だと言うのです。自動車業界も売れ行きに陰りがでています。街中を走る車も心なしか少ないように感じます。
 今、原油高騰による物価高は農業や企業だけでなく、家庭生活にも影響がで始めています。環境が最大テーマの洞爺湖サミットが開かれますが、環境だけでなく物価高の原因、原油投機についての話し合いを行うべきです。不当な投機による原油高にストップをかけるための呼びかけを、資源のない日本だからこそ世界にアピールし、原油高騰を抑えるために産油国への働きかけを行うなどの努力を重ねていかなければいけないと思うのです。

 

 

●原油投機に危機感を訴え

 実は、投機マネーによる原油高騰の兆しは4年前に既に起きていました。私は衆議院予算委で原油価格の高騰によって日本経済が危機的状況に陥ることを予測し、「政府として世界に向けて原油を投機の対象にすべきでない」と、当時の小泉総理にただしました。ところが元総理は「投機は政治的圧力をかけても止まらない」と、何の手立てもとらなかったのです。それが今、投機マネーによる原油高騰で世界経済が大変なことになっています。政府は世界に向けて投機に対する規制策を論じるとか、産油国への増産を促すとか、何らかのメッセージを発していれば、少しは違った状況になっていたかもしれません。元総理の無策は今になって思えば残念でなりません。
 官僚はサミットを無事に乗り切ることだけを考え、面倒なことはやりたがりません。面倒でも、今こそ原油価格の高騰に歯止めをかけ、緊急の景気対策と物価の抑制策が必要です。福田総理は議長国日本の総理として野党の意見を聞き、強いリーダーシップを発揮してサミットをリードしてほしいと思います。政治のリーターシップが問われているのです。

 

 

●モラルの欠如は政治の責任

 「またか」、という感じです。宙に浮いた年金記録5000万件の照合も終らないうちに、年金記録の紙台帳に入力ミスがあり、約560万件に年金が適切に支払われていないか、または将来支払われない可能性があることがわかりました。次から次へと問題が明るみになるのは、参議院での与野党逆転で野党の追及が厳しくなったからです。情報を小出しにしてくる社会保険庁、そして監督省庁の厚生労働省、厚労大臣もことの重大さをどれほど真剣に受けとめているのでしょうか。
 今まで私たちが人間として、また社会の一員として守ってきた制度やモラル、コンプライアンス(法令順守)が大きく崩れ、この状況を表す動きが至るところで起きています。安全航行が不可欠のイージス艦の衝突事故にみられる自衛隊の組織全体のたるみと希薄な安全意識。また、いわゆる居酒屋タクシーでの金品受領を続けていた公務員が、17の省庁と政府機関で1402人いたとの調査結果。教育費、社会保障費は削られる、後期高齢者医療制度でお年寄りには負担を強いる、そして税金の無駄遣いが指摘される中での官庁の恒常化したデタラメは組織のたるみ以外の何ものでもありません。大手人材派遣会社が日雇い労働者の二重派遣で不法な利益をえて、これが日常的に行われていたこともわかりました。規制緩和で改正された労働者派遣法の悪用は、働く貧困層を増やし、ワーキングプアの温床をつくりだしてきたのです。大手企業が国際競争力を付けなければと言いながら、パートや派遣社員の犠牲の上に立ち、最高の利益を上げてきたのも事実です。株主をだますライブドア、「物言う株主」として企業買収に走った村上ファンドも同じようなもの。小泉、竹中路線がグローバルスタンダードの名のもとで、行き過ぎた市場原理主義を煽ってきたことのツケが一気に吹き出た感は否めません。
 その他にも中国産ウナギを愛知県産と偽ったり、岐阜県の業者が牛肉産地や消費期限をごまかしていた問題、食品の産地偽装や消費期限をめぐる問題は後を絶ちません。これらの問題からも、儲け主義と社会規範のゆるみが益々ひどくなっていることがわかります。社会のモラル、企業の質低下が日本を無責任な国へと堕落させてしまったのです。
 行政の責任を問わなければなりません。と同時に儲かれば何でもありの極端な市場原理主義と、これによって広がった格差社会を放置したことは政治の責任でもあります。これをただしていかなければならないのです。