闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

国政リポートNo.498
2008年1月28日

 

 景気後退の懸念を受け大減税を行い、金利を下げるなど、アメリカは素早い対応を見せています。それに比べて日本はどうでしょう。かつての金融危機、不良債権処理でトウーリトル・トウーレイトと言われました。日本では定率減税も扶養者、高齢者特別控除もなくなり医療費、年金、介護料は上がる一方で、サラリーマンの給与は下がり続けています。これで景気がよくなるわけはありません。対応が遅い日本政府。躊躇せず消費を喚起する政策と強いメッセージを発するべきです。

 

◆危機感乏しい政府の対応
 世界同時株安で経済政策に成す術を持たない福田内閣


●素早い景気刺激策を示せ

 今年に入り、アメリカに端を発した世界同時株安は、日本経済に大きな打撃を与えています。既に100兆円近くの損失をだしていることが指摘され景気後退の懸念が顕在化しつつあります。政府はその対応に、どのようなメッセージを発信するか注目していましたが、衆院予算委で福田首相は「原因はアメリカのサブプライムローンの焦げつき、日本がどうこうするのは難しい」とか、「投資家の問題である」とか、日本経済の悪化懸念に対しては、まるで他人事です。財務大臣からも「最大の対策は2008年度予算を年度内に成立させること」との言及だけで、緊急対策の具体性が乏しく、危機感がどこからも伝わってきません。特に経済担当大臣は、「景気は回復基調にある」などと、ピント外れなことを述べています。政府には景気認識も中小零細企業の厳しい状況もまったく分かっていないようです。
 ブッシュ大統領の評判は決して良いわけではありません。それでも素早く16兆円の減税策を打ち出し、またFRB(連邦準備制度理事会)では、すぐに0・75%の利下げに踏み切るなど、積極的な動きを見せています。日本政府にはまったくその動きが見られません。

 

 

●手放さない官僚の既得権

 来年度の予算が組まれようとしています。本来ならすぐに予算を提案して、通常国会150日の中で十分な質疑を行っていかなければなりません。ところがガソリン税に象徴される租税特別措置法案の期限切れを3月末に控え、道路特定財源と暫定税率を継続したいために、政府・自民党与党は関連法案を先議することを決めました。さらには3月末の期限切れを一定期間延長する姑息な法案まで考えているのです。何が何でも自由に使える財源を死守したいとの官僚の思いが如実に表れています。
 小泉、安倍政権時代、道路特定財源は少なくても計画より2割減、そして特別会計を一般会計に導入する考えを示していました。ところが福田政権になったら元へ戻ってしまったのです。暫定税率も今後10年間継続し道路を造り続けると平気で言いだしています。まさしくこれが自民党道路族、官僚に押し切られた福田内閣の姿なのです。首相は施政方針で民主党の政策を真似て「生活者重視」を繰り返し述べました。しかし、具体策を追及されると、むしろその中身は「官僚の官僚による官僚のための政治」であることがハッキリしてくるのです。これで良いのでしょうか。

 

 

●道路財源は自民の利権構造

 私たちはガソリン価格を25円下げると言っています。それは象徴的で分かり易いからです。景気対策につながる可能性があるからです。今の道路特定財源は税金に消費税をかけてみたり、それらを貯め込んだ埋蔵金を50兆円も膨らませてみたりで、暫定税率はすべてに関連しているのです。道路財源を職員官舎の建設やレクリエーションなどの福利厚生費に充てていたこともわかりました。特定財源で得たカネは自分たちの裁量との考えです。社会保険庁の年金資金の流用と同じことが、道路財源でも行われているのです。そればかりか特定財源の中には天下りのための人件費も入っています。民間企業では会社が移れば、良くても同程度の賃金か、それ以下です。ところが公務員は2割アップします。40年間働いた民間企業の退職金3000万円を、役人はたった3年で手に入れる、これを3回も繰り返しているのです。このような仕組みを守りたいからこそ、道路特定財源や暫定税率廃止に躍起になって反対しているのです。福田政権下ではムダの温床となっている特別会計にメスを入れることができません。これらの財源は自民党の利権体質の象徴なのです。財源がなくなると道路ばかりか歩道橋やガードレールもできなくなる、国民生活に支障をきたすからと、マスコミを使い、地方自治体にも危機感をあおりながら財源維持を狙っているのです。
 不必要な道路を造り過ぎて、財政に圧迫をきたしている自治体、本当に必要な道路はどれなのか。道路特定財源を何にでも使える一般財源化にして、優先順位を地方が独自で決められるようにすべきだと思うのです。