闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

国政リポートNo.493
2007年11月19日

 

◆ねじれ国会は民意の表れ

 政府・自民党の問題法案をあぶり出し、国民にとって決してマイナスではない

 「法案審議が行き詰まりをみせ、国民生活に直結する法案が一本も通らない。ねじれた国会を修復する」と、自民党は連立構想を打ち出しました。しかし今回、自民党の持ちかけた連立構想は、当面するテロ特措法を何とか処理し、政権維持を画策しようとするもので、テロ特措法の後は消費税増税へと目が向けられているのです。

 

●連立は自民の政権維持装置

 連立構想は自民党が国会運営に行き詰まりをみせると、必ず持ちだされる党の生き残り政策で、国民のためなどとはとても言い難いものです。かつて、「自・社・さ」連立では時の最大野党の社会党まで担ぎ出し、村山内閣までつくっているのです。政権を維持するためには野党にまで手を突っ込んで、何でもありの政治を展開するのが自民党のやり方です。連立の動機づけが不純極まりないものなのです。
 「衆参のねじれ国会は正常ではない」との意見があります。しかし、これは提出法案を審議もそこそこに成立させたい政府・自民党側の意見です。参院で民主党野党が最大勢力となった今、僅かな疑問すら挟む余地が与えられなかった法案が、一つ一つ真剣に審議されることになったのです。テロ特措法の延長もそのうちの一つです。
 テロ特措法は6年間にわたって3回も延長されました。この間、給油の実態が一切明らかにされてこなかったのです。国際貢献といいながら、アメリカの軍事オペレーションに組み込まれていたのです。燃料転用疑惑も明らかになりました。なし崩し的に派遣を続けることは危険です。海上阻止活動を続ける給油先の各国艦船の撤退も相次いでいるのが現状です。

 

●「ねじれ」によるプラス効果

 このままではアメリカに追従して世界中に自衛隊を派遣できることになってしまいます。海上の給油活動が停止してから、実際に艦船が動かなくて困っているのでしょうか。給油活動の停止はアメリカのメディアでは殆ど取り上げられていないのです。アメリカとの軍事オペレーションが事前の国会承認もなく、文民統制も利かない中で、海上自衛隊が給油活動を続けていたことを、国民はねじれ国会によって初めて知ったのではないでしょうか。イラク特措法で派遣されていた自衛隊がサマワから撤退したことは国民の多くが知っています。しかし、航空自衛隊による輸送活動が未だ続いていることを知る人は少ないはず。これも、民主党のイラク特措法廃止案の提出でわかってくると思います。

 

●「ねじれ」を機に政治を健全化

 国民にとって、最も関心の高い年金問題では、当時の小泉政権が掲げた「百年安心の年金制度」が国民を欺き、役人が都合よくつくり上げた制度であることが明らかになりました。社会保険庁の隠ぺい体質がより鮮明になったのも、参院で民主党の優位性が保たれるようになったからです。
 年金を給付以外には使わせない「年金保険料流用禁止法案」に注目が集まるのも、ねじれ国会だから可能となったのです。
 年金以外にもまだあります。命を縮め、長年棚ざらしにされてきた肝炎対策。高齢者医療費の3割負担の凍結。役人が障害者の痛みをまったく理解せずに成立させた障害者自立支援法の1割負担の凍結。被災者の住宅再建をしやすくする再建支援改正法案など、生活実態とかけ離れた法案の問題点を根本から洗い直すことができるようになったのです。国民生活に関連する大事な法案が民主党主導で進められる環境が整ったことになるのです。
 NHKなど14機関28人の委員を任命する政府提出の国会同意人事案件は、今までは問題すら提起されず、殆ど自動的に承認されてきました。国民には関心が薄い人事案件ですが、これも56年ぶりに不適格委員を否決することにつながりました。また「バラマキだ」と、民主党案を批判した小規模農家への支援制度も、見直しを始めました。自民党の官僚主導政治にとっては、主導権を握られる焦りと危機感とが連立構想を浮上させ、「ねじれ国会は正常ではない」と、言わしめているのです。
 政府・自民党は「ねじれ国会がもとで法案が通らず、国民の生活は窮地に追いやられる」と、脅迫めいたことを口にして、不安をあおっています。「民主党が、何にでも反対するから悪い」と言わんばかりです。むしろ、ねじれ国会は強行採決を許さず、国会を正常な形へ戻そうとの民意の表れで、決してマイナスばかりではないのです。
 参院の大敗で、政府・自民党には好まざる事態がおきています。自ら政治の行き詰まり状態を招いておいて、政権維持のために安易な連立構想を画策する。それよりも今、選択可能な二大政党制の実現こそが政治の健全化には必要なのです。