闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

国政リポートNo.491
2007年10月22日

 

◆消費税を上げる前に

●成すべきはムダをなくすこと

 安倍政権下、問答無用で17本もの法案が強行採決されました。それが福田政権では一変して対話戦術に転じたのです。参院選で、国民が自民党与党の強権政治に「ノー」のシグナルを示したことで初めて政府の暴走にブレーキが掛けられる状況となったのです。与野党の逆転がなければ、私たち民主党の考えが聞き入れられることは一切なかったと思います。格差拡大にも歯止めが掛からず、テロ特措法も情報公開されず、事前協議もないままに国民に知れることなく4回目の延長が行われる。年金問題も「百年安心」などと言いながら、すべてに議論も深められない状況が続いていたはずです。さらには、参院選で自民党が勝利していたならば消費税引き上げは確実になっていたと思います。
 政府は国、地方の財政を2011年に黒字化するには最大で消費税2・5%分の6兆6000億円の増税が必要との試算を示しました。債務を増やさず社会保障給付を維持するには25年度に最大31兆円の増税が必要と試算したのです。これを消費税で賄えば税率が17%程度まで上昇すると言うのです。福田首相は「高齢化は確実に進行する」と増税の必要性を否定せず、消費税増税の環境づくりを始めているのです。
 相次ぐ増税は景気回復を腰折れさせ、却って財政を悪化させてしまいます。このような時、消費税アップは本末転倒です。役人は「足りなくなれば国民から召し上げる」発想しかありません。既得権は絶対に手放さず保身しか考えていないのです。財政を健全化するには景気を回復させること。そして増税する前に行政のムダを徹底的に洗い直すことです。例えばムダ遣いの温床、役人が天下りを続ける特殊法人には年間5兆円以上もの税金が使われています。まず先にやることは国民への負担増よりもこれらのムダをなくすことなのです。

 

●表面化した改革の問題点

 日本が国際社会の中で生き抜くために必要だと、グローバルスタンダードを追い求めてきた小泉改革は、国民にとって痛みの実感だけを残してしまいました。一億総中流社会だったものを小泉政権になってからはホリエモン、村上ファンドなど、儲かれば何でもありの風潮がまん延し、格差社会を容認する背景ができあがってしまったのです。「格差があっても当たり前」とする政府も、参院選で与野党が逆転すると格差の歪みがでている状況に対して、福田首相は「格差をなくす」と方向転換を口にし始めました。行き過ぎた小泉改革の失敗を半ば認めた福田首相。このツケを具体的にどう解決するのか、その指針がはっきりと示されていません。私たちの主張する「生活が第一」を基本に考えれば、自ずと答えがでてきます。大企業だけが儲かり、弱者には増税と社会保障費の負担だけを強いる。暮らしに軸足を置いた改革を後回しにしてきたことに問題があるのです。
 米国の年次改革要望書で要求されるままに急いだ小泉改革。「法律に準備不足がある」と政府に慎重な対応を求めていた三角合併も現実のものとなり、外資による日本企業の買収が始まりました。改革の本丸と謳った郵政民営化では、心配ないと言っていた郵便事業の全国均一サービスが危うくなっています。今後、外資が巨額の郵貯資金に目をつけないわけがありません。改革だけが先行し後追いの法律に、懸念していた動きが現実となって表れてきています。

 

●二大政党制の実現へあと一歩

 参院選の民主党勝利によって参議院で法案を通すことができるようになりました。例えば、今の障害者自立支援法は障害者からも負担を強いる名ばかりのものです。民主党は利用者の負担を凍結する改正案を提出します。また格差社会がこれだけ大きくなったことは自民党政権がもたらしたツケです。社会保険庁の問題も、参院で与野党逆転できたからこそ問題点が明るみにでてきたのです。国政調査権を使えば初めてわかることもでてくるはず。二大政党制が実現すれば、今まで国民に知らされなかったことが、よりオープンになっていきます。非常にいい傾向になっているのです。この緊張感を持続して政権交代を実現しなければなりません。
 「借金は増え続ける。予算を削らなければ大変だ。税金を上げなければやっていけない」と政府・自民党与党。しかし、増税路線に待ったをかけられる状況もできつつあります。役人が国会の承認も得ずにムダ遣いを続ける特別会計にもメスを入れられる環境が整いつつあるのです。防衛省の守屋前事務次官と特定業者との間で頻繁に行われていた官業癒着などもなくなります。参院で与野党が逆転している今、次の衆院選こそが増税路線を画策し、ムダを続ける官僚支配の政治から脱却できる最大のチャンスだと思うのです。