◆任せられない年金改革
政府・自民与党は消えた年金の総額もださず、
官僚政治が生んだ年金不信、官邸主導も空回り
●強行採決の乱発に危機感
先週、「政治とカネ」の問題で事務所費に端を発した政治資金規制法改正案が衆院を通過しました。民主党は抜け穴だらけのザル法に対案を提出して真摯な審議を求めてきました。しかし、自民与党は歩み寄りを見せず、突然審議を打ち切っての強行採決となりました。今国会は強行採決の乱発となっています。年金改革も社保庁改革も、すべて問答無用、数の勢いで一方的に決められてしまっています。強引な採決に民主政治の危機感を覚えてなりません。自民与党に多数を与えてしまったことが間違いで、後世に憂いを残すことだけは絶対にさけなければなりません。大事な参院選の投票を前に、国民の一人ひとりが民主政治が何かを考えて欲しいのです。
●役人の隠ぺい体質を許すな
「信頼してください」と安倍首相が唱えても、あるいは官邸主導で年金対策を講じても、次々と明るみにでる社保庁の失態。民主党は負担増と給付減の年金改革には大反対でした。当時の坂口厚労大臣が「年収の50%は確保できる」と答えましたが、年金財政の基礎となる特殊出生率のごまかしで年金不信は強まる一方です。都合の悪いデータをひた隠しにし、納付率をよく見せかけるための不正免除も頻発。村瀬長官が「国が責任を持って運用しているから安心」との発言で、却って年金の信頼性が薄れていったのです。
非効率な保養施設の運営、年金資金の不正流用など5兆円に及ぶ無駄遣いを隠し通すその実態は、歴代首相も官邸も、あるいは担当大臣すら知らされていなかったと言います。役人にとっての都合の良いデータだけを鵜呑みにし、隠ぺい体質を許してきた内閣、自民与党の責任は免れません。官僚政治に頼る政官癒着の構造が、社保庁と年金制度をここまで堕落させてしまったのです。
国民年金5000万件、厚生年金1430万件、さらに今度は社保庁が管理する船員保険でも36万件の入力漏れが発覚しました。ズサンな管理が次々に明らかになっているのです。いい加減なデータはいつかはばれるもの。政治主導で年金改革を進めていくのなら、官僚の言うことだけを信用するのではなく、民主党の主張に謙虚に耳を傾けるべきなのです。
民主党は過去の厚生官僚に「(年金を)使っちゃえ。後でいくらでも取ればいい」という人がいたことを、参院厚労委員会で取りあげました。また旧厚生省の外郭団体が出版した資料で「厚生年金保険基金や財団をつくれば、OBになったときの勤め口に困らない。何千人だって大丈夫だ」などと天下りや保険料流用を滲ます発言をしていたこともわかりました。柳沢厚労大臣もこれを認めています。役人の発想は国民軽視、乱暴極まりない話なのです。
民主党は社保庁に関する問題点を3年前の年金改革の時点から既に取り上げてきました。追及の手を緩めずに地道に調査を進めてきたことで、データ隠しの裏にごまかしがあったことが判明し、今になって、それらがボロボロでてきているのです。
●退職金の返納を要求せよ
自民与党からは社保庁の労働組合が悪いと、非難の声がでています。確かに職員も問題があります。だからと言って職場全体にまん延した社保庁の無責任な体質、ズサンな管理を認めてきたトップの責任は免れません。長官、大臣、首相の責任も明らかにしていく必要があります。特に、天下りを繰り返し、高額な給料と法外な退職金を手にした歴代の長官には、給与や退職金の返納を求めていかなければ国民の怒りは収まりません。退職金は年金積み立てから出ているのです。
消えた年金はどれくらいあるのでしょうか。このままでは、その分が減額されて支給されることになるのです。既に減額されている人がいることもわかりました。老後の暮らし、生活の安定に直結することであり、補正を組んで補償すべきです。
首相は当初、難色を示していた5000万件の記録付け合わせを、国民の関心が高まるや「1年で終える」と約束しました。しかし、既に現場では大混乱が起きています。その他にも不明な点がでてきています。1年ではとても無理、私は3年程度はかかる大変な作業と思っています。
貯金には入金、残高、利息が印される通帳があります。これと同様、納付履歴がわかる「年金通帳」の発行を民主党は提言してきました。ところが、前向きな考えを示さなかった政府・自民与党は民主党案とは大差のない「年金カード」案をだしてきたのです。自らのミスを指摘されて身動きに窮すると、5年の時効を撤廃する特例法案をだすなど、場当たり的な対抗策で、何とかその場を凌ごうとする自民与党。さらには参院選を前に年金問題で形勢不利とみるや、生き残りをかけて国会の会期延長の調整に入るなど、国民を置き去りの政治を繰り広げています。
年金は国民にとっての大事な老後の支えです。言い逃れに終始する政府・自民与党は国民の窮状をわかっていないのです。