闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

国政リポートNo.479
2007年5月7日

 

◆問題山積、5月の連休◆

◇懸念点多い三角合併

 昨年5月に施行された商法改正で1年先送りになっていた三角合併が1日から解禁になりました。これで外資の敵対的買収攻勢によるM&A(買収、合併)が容易となったわけです。この背景には小泉政権時に進めたグローバル化による外資導入政策と米国経済界からの対日直接投資圧力とがあります。バブル崩壊後、日本企業の体力が弱まっている中での外資投入は、日本企業の立ち直りに悪影響を与えるのではと懸念されていましたが、企業経営の立ち直りに貢献できるからと、既にゴルフ場、ホテル、そして保険、銀行など、企業買収が行われています。しかし、その殆どは経営の健全化をはかるより、株価を吊り上げて利ざやを稼ぐ投資ファンドに利用され、さらに今回の三角合併で、今後この動きが加速されることになれば、日本独自の貴重な技術が海外に流出する恐れもでてきます。民生用の技術が軍事用に転用され、日本企業にとっては武器輸出3原則を順守してきた精神が踏みにじられることも予測されるのです。
 M&Aからの企業の防衛対策が十分に執られているのか、外資を利するだけの商法改正とはならないのか、政府は監視の目を光らせて欲しいと思うのです。

 

◇労働の原点見直す機会

 5月に入り、この1週間はメーデーから始まり憲法記念日、みどりの日、こどもの日と休日が続き、4月の昭和の日と合わせると、まさに黄金週間(ゴールデンウイーク)となりました。メーデーは休日でこそありませんが、フランスを起源に米国で労働者が8時間労働を求めて起こしたスト以来、1世紀以上にわたり続いてきた祭典です。ところが近年、連休を意識して5月1日に拘らず、ゴールデンウイーク期間内の休日に合わせて祭典が行われるようになりました。勤労者の事情、主催者の苦労、時代の流れを考えると仕方のないことかも知れませんがメーデーは文字通り5月(メイ・デー)の祭典です。その基本と歴史、文化を踏まえておかないと団結と共生など、本来の意味が薄れ、勤労精神の緩みが生じて思わぬ混乱を招くことになるのではと感じるのです。
 モノづくりの基本を忘れ、マネーゲームが日本経済を席巻する昨今だからこそ、メーデーでは世界の労働界がどのような活動と取り組み方をしているのか、働くことの原点が何処にあるのかを再認識する機会にしてほしいと思うのです。

 

◇慎重さ欠ける憲法改正

 3日、憲法が施行されてから60年が経ちました。日本は、この間一度も戦争を起こすことなく経済発展を遂げてきました。この前提になるのが9条であり戦争を放棄してきたことです。国民の8割以上が9条は日本の平和に貢献したと答えています。
 この9条を含めて憲法改正がいわれています。自衛隊は海外からみれば明らかに軍隊で、憲法違反だとする国民の声もあります。しかし、私は専守防衛に徹する自衛隊は認めるべきと考えています。これを誤魔化さずに、憲法の中でキチンと明記していかなければいけないのです。自衛隊の保持を含め、どのように改正するのかを曖昧にしておくべきではないのです。
 安倍政権になって、憲法改正の前提である国民投票法案が自民党与党の多数決で衆院を通過してしまいました。そして今、参院で審議され、水面下では着々と改正への準備が進められています。
 憲法改正には国民のコンセンサス(同意)と最低投票率を有権者の7割に決めることが必要です。そして、意見の集約をはかるためにこそ議論を重ねていかなければならないのです。ところが、既に今国会では投票法案を成立させるためのタイムスケジュールができあがっています。憲法改正は必要で決して反対するものではありません。それには現憲法の矛盾点を洗い出し、審議を尽くす必要があります。それなのに、まず改正ありきとなっているのが今の状況なのです。
 国民の多くは憲法改正をすぐに行うべきと思ってはいません。21世紀の国づくりと、その方向性を示すのが先決です。そして、そのために憲法改正が必要なんだと、説明を十分に行い審議を尽くすべきです。改正へ向けての順番がアベコベになっているのです。
 9条以外にも、現憲法が施行された60年前には想像もつかなかった問題がでてきています。環境権、情報通信事情など、国民生活も大きく変化しています。改正論議をいたずらに引き延ばすわけではありませんが、多くの問題点を抱えた日本国の憲法改正には、もっと慎重になるべきなのです。