国民の暮らし、景気に対する19年度予算案の審議が国、地方ともいよいよ始まります。予算総額としては1・5%程度の増加となっていますが手放しで喜べる状況ではありません。それは市・県民税の増税によって財源が増えたことによるものだからです。これからは個人消費が増え、本格的な税収増につながる景気対策を打ち出していかなければなりません。私が地域企業の新年会やさまざまな催物に触れて感じたことは、中小零細企業の現状はいまだに苦しいということです。駅ビルの紳士・婦人・子ども服売り場、商店街の酒店などが店じまいしていることでも景気の厳しさが伝わってきます。景気を判断する1月の景気ウオッチャーも悪化しています。政府は一進一退の状況を把握して景気動向を見極めるべきです。
神奈川県内の1月の企業倒産件数、負債総額とも前月比で大幅に増加していることがわかりました。自殺者にしても8年連続増加を続けています。この原因の一つに労働分配率の変化による格差社会の拡大が挙げられます。投資家・経営者、労働者、そして設備資金など企業の運用として3等分されていた富の分配が崩れてきたところに格差拡大の問題点があります。97年に66・0%だった労働分配率は05年度には60%を割込み、反面、株主配当や役員報酬は01年と05年を比較すると大幅に増加していることが連合の試算でわかりました。利益の分かち合いは健全な商習慣として長年にわたって根付いたもので、日本の文化・伝統を支えてきたのです。それが今、崩れ去ろうとしているのです。
05年までの5年間で正規雇用が140万人も減り、その分非正規雇用が増加となりました。ここにきて正規雇用にシフトする動きが見え始めていますが、これは800万人もの団塊世代の大量退職に備えた動きでもあり、本格的に雇用情勢が好転するか、注視していかなければなりません。職場の確保、収入の安定がこの先の景気回復のカギをにぎっています。この状況を加味しながら、格差社会の是正に向けて国会は一日も早い景気対策を打ち出していくべきなのです。
●少子化、年金対策に本腰を
「女性は子どもを産む機械」発言が飛び出しました。この説から言えば、「男性は子どもをつくる機械」とでも言うのでしょうか。政府は冒頭から厚生労働大臣の不適切な発言によって、私たち民主党や他の野党、そして国民からも非難を受けることになりました。人は国家の資本です。出産はその根本をなす重要な問題です。人の生命、人の価値を基本に考えていかなければなりません。軽率な発言は時として、その人の本性を吐露するものです。これが続くようなら大臣の人間性を疑わざるをえません。このような閣僚がいる内閣では「美しい国、日本」を掲げる資格はないと思います。
出生率の低下は年金にとっても深刻です。年金改革の前提だった出生率が1・39から1・26に下方修正されました。しかし、経済見通しの改善で「百年安心」の年金制度は揺るがないと政府は言うのです。数字の操作は明らかです。フランスのように、国を挙げての総合的な少子化対策で出生率が改善した国があります。日本も他国の成功例を参考にし、国と地方、また省庁間の垣根を越えた横断的な少子化対策が必要になっています。
一方、社会保険庁の無駄遣い、ずさんな管理運営に対する改革が言われていますが、生ぬるい改革では良くなりません。何度も繰り返していますが、社会保険庁は完全に廃止する。その受け皿を財務省なり厚生労働省なり、他の部所が代わって取り組む体制を整えるべきなのです。ミカン箱の腐ったミカンを一つ二つ取り去ったところで、全体に与える悪影響をなくすことは困難です。腐りきった社保庁は箱ごと総取り換えをしなければ、同じことを繰り返すことになってしまうのです。
●非難するよりやるべきこと
「政治は生活」そのものです。この考えを前提に、政治に取り組んでいかなければ景気回復も少子化対策も、そして年金改革も実現不可能だと思います。
今、衆院では予算委員会のまっ最中です。私も一昨年の予算委では筆頭理事を務め、法案の問題点をただしてきました。その経験から、このところの委員会で気になることがあります。それは厚生労働大臣の不適切発言の言葉尻を捉え、しつこく謝罪要求の質疑を重ねていたことです。いつまでも同じことを繰り返す民主党に、国民は嫌気をさし始めています。国民は、もう大臣の謝罪など望んでいません。それよりも出生率の改善に、格差の是正に、民主党ならどう対処するのかに期待を寄せています。世論の動き、国民の望んでいることに的確に応えて政治を行ってきたのが民主党だったのではないでしょうか。そのことを念頭に審議に臨むべきです。それが信頼される民主党の役割であり、本来の姿だと思うのです。