3ヶ月ごとの日銀短観で、「景況感が3期連続で改善」と発表されました。特に大企業製造業の設備投資が好調を持続していると言うものです。しかし、同時に小売業では前回の調査より悪化し、個人消費は落ち込んでいることもわかりました。
「いざなぎ超え」と言う陰で
命を奪い、社会を脅かす現実
自民・与党がまとめた来年の税制改正大綱では、減税は相変わらず個人よりも企業優先となっています。企業の負担を軽くして景気の拡大に結びつけようとのねらいです。企業優遇ばかりを続け、個人の所得減税を行わなければ消費は回復しません。政府は「企業業績がよければやがて家計にも反映される」と言ってきました。しかし、企業は正社員を減らし人件費を抑えて利益を株主に回し、そして銀行はゼロ金利政策を続けています。儲かった銀行は税金を払わずに、政治献金まで再開しようとしています。銀行だけが儲かる仕組みを整えても個人の所得が増えていないのが実態です。
来年1月から所得税の定率減税が廃止され、約1兆2千億円の増税となります。企業の業績が好調でも家計に波及しない現状を考えると個人を置き去りにした自民与党の税制政策では消費は盛り上がらず、景気は一段と冷え込むことは確実です。
アメリカ型のグローバルスタンダードの考え方によって進められてきた小泉改革。極端な成果主義社会をつくりだし差別の拡大につながりました。所得の片寄りで富裕層と一部の勝ち組企業ができ、勝ち組の好況感をみて、それを景気回復だと強弁し続ける政府・与党。国民の可処分所得が減り続けています。徹底した効率化で大企業は競争力を取り戻し、消費者は価格やサービスで確かに恩恵を受けている面もあります。一方では、人々の生活や安全が脅かされる状況が生じていることも忘れてはならないのです。例えば、トラック業界で「荷主に『断ったら仕事を他にまわすぞ』と言われ、運賃をたたかれて経営が苦しくなり、どうしようもなかった」。これは居眠り運転で渋滞の列に突っ込んで死亡事故を起こした運転手の話です。規制緩和以来、トラック業界は過当競争で運賃が下がり、交通事故は90年に比べて6千件も増えていると言います。
また、世界一レベルの高い、日本の消費者ニーズに応えるために、業績を優先するコンビニの配送車が、朝の渋滞を避けるために危険と隣り合わせの狭い通学路を猛スピードで通り抜けています。消費者の要求はどこまでがニーズでどこまでがわがままなのか・・・。
これらは「景気は回復している」と言う陰で、利益優先、市場主義に歯止めがきかなくなった現実の姿なのです。この事実を真剣に考えていかなければならないのです。
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