闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

国政リポートNo.469
2006年12月18日

 

世論誘導のやらせ質問
民主主義を裏切った教育基本法改正案の成立

 数の勢い、与党の横暴、強行採決で成立をみた教育基本法改正案は、国民の多くが改正の必要性を認めながらも、その内容については問題を残したままとなっています。
 「やらせ質問」で世論誘導が行われたタウンミーティングは、1回の開催に約2千万円もの費用をかけていたといいます。この費用はすべて税金です。国民への説明も承諾もなしに、役人の采配で常識を逸したカネの使われ方がされていたのです。大事な教育基本法改正案が、大手広告代理店に運営を丸投げして作られていたことがわかったのです。つまり、今回の教育基本法は最初から結論ありきの改正案でしかなかったと言うことです。これでは私たち民主党がいくら政府・与党案より優れた法案を出しても、まったく意味のないことです。
 「やらせ質問」に対しては安倍首相も非を認め、自らの給与の一部を返上することを決めています。しかし、責任はカネで済む問題ではないと思うのです。「やらせ質問」で世論を誘導するようなことをして成立させた基本法は、国民の総意なのでしょうか。責任をとるなら基本法を一度廃案にして、民主党案を含め、改めて審議すべきなのです。
 いじめやいじめによる自殺、登校拒否、必修逃れの問題で、民主党は教育委員会の不適切な対応を指摘してきました。教育委員会も文部科学省も、学校現場の状況を把握できないために、問題を見過ごしてきてしまったのです。例えば、横浜市は360万人の人口に対して教育委員はわずか6人です。四国4県の人口は412万人で、横浜市より多いとは言え、市町村合わせて900人近い委員がいます。つまり地域のバラツキが生じているのです。国と地方の役割分担を考える時代だからこそ、民主党案は教育委員の廃止を盛り込んできたのです。
 今回、成立の法案の中には人を思いやる心とか、あるいは国を愛する心、先祖供養などの宗教心を大切にしなければならない思いも、十分に盛り込まれているとは言えません。これで本当に国を思う教育基本法になるのか疑問です。民主党案は宗教教育でも「命の大切さ」を訴え、死生観に関する教育の重要性を盛り込んで、いじめによる自殺を未然に防ぐための対応も考えられているのです。この点を、今後どのように担保していくのか気掛かりです。
 とにかく法案は、その理念である基本法をつくればいいと言うものではありません。家庭教育、社会教育、学校教育と、それぞれの教育現場の連携が不可欠です。その上に立って、私たちは教育基本法の重要性が如何にあるべきかを考えていかなければならないと思うのです。

 

 3ヶ月ごとの日銀短観で、「景況感が3期連続で改善」と発表されました。特に大企業製造業の設備投資が好調を持続していると言うものです。しかし、同時に小売業では前回の調査より悪化し、個人消費は落ち込んでいることもわかりました。

「いざなぎ超え」と言う陰で
命を奪い、社会を脅かす現実

 自民・与党がまとめた来年の税制改正大綱では、減税は相変わらず個人よりも企業優先となっています。企業の負担を軽くして景気の拡大に結びつけようとのねらいです。企業優遇ばかりを続け、個人の所得減税を行わなければ消費は回復しません。政府は「企業業績がよければやがて家計にも反映される」と言ってきました。しかし、企業は正社員を減らし人件費を抑えて利益を株主に回し、そして銀行はゼロ金利政策を続けています。儲かった銀行は税金を払わずに、政治献金まで再開しようとしています。銀行だけが儲かる仕組みを整えても個人の所得が増えていないのが実態です。
 来年1月から所得税の定率減税が廃止され、約1兆2千億円の増税となります。企業の業績が好調でも家計に波及しない現状を考えると個人を置き去りにした自民与党の税制政策では消費は盛り上がらず、景気は一段と冷え込むことは確実です。
 
 アメリカ型のグローバルスタンダードの考え方によって進められてきた小泉改革。極端な成果主義社会をつくりだし差別の拡大につながりました。所得の片寄りで富裕層と一部の勝ち組企業ができ、勝ち組の好況感をみて、それを景気回復だと強弁し続ける政府・与党。国民の可処分所得が減り続けています。徹底した効率化で大企業は競争力を取り戻し、消費者は価格やサービスで確かに恩恵を受けている面もあります。一方では、人々の生活や安全が脅かされる状況が生じていることも忘れてはならないのです。例えば、トラック業界で「荷主に『断ったら仕事を他にまわすぞ』と言われ、運賃をたたかれて経営が苦しくなり、どうしようもなかった」。これは居眠り運転で渋滞の列に突っ込んで死亡事故を起こした運転手の話です。規制緩和以来、トラック業界は過当競争で運賃が下がり、交通事故は90年に比べて6千件も増えていると言います。
 また、世界一レベルの高い、日本の消費者ニーズに応えるために、業績を優先するコンビニの配送車が、朝の渋滞を避けるために危険と隣り合わせの狭い通学路を猛スピードで通り抜けています。消費者の要求はどこまでがニーズでどこまでがわがままなのか・・・。
 これらは「景気は回復している」と言う陰で、利益優先、市場主義に歯止めがきかなくなった現実の姿なのです。この事実を真剣に考えていかなければならないのです。