闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

国政リポートNo.468
2006年12月4日

 

見通し甘い「景気・雇用改善」
実態経済の厳しさを認めようとしない政府・自民党

 総務省は10月の完全失業率が4・1%と、前月比0・1ポイント、失業者数で23万人減って「雇用情勢は改善している」と発表しました。企業の雇用意欲と女性層が就職に結びつく動きが広がったことが失業率の改善につながったと言うのです。しかし、これは団塊世代の定年退職に備えた動きであり、有効求人倍率では前月よりも0・2ポイント低下し、若者層においては相変わらず8%台の高失業率を示すなど、厳しい状況が続いているのです。政府の「景気が回復した」との楽観的見方、雇用判断の甘さを指摘しておかなくてはなりません。

 

金融を変えてしまった儲け主義

 貸金業の上限金利を20%に引き下げた「貸金業法案」が衆院で可決されました。当初、金融庁の調査で多重債務者の借金返済による自殺は2%台だと報告されていました。しかし、実際は約26%にもなっていたことがわかりました。金融庁への報告が一桁違っていたのです。銀行が潰れたら国家の一大事だと、政府は税金をつぎ込んで金融機関を助け、結果的には金持ち優遇となっています。中小零細企業の状況は政府が言うほど改善されていません。働いても行き着くところは資金繰りの問題です。融資を申し込んでも都市銀行は形を変えた貸し渋りを続けています。その都市銀行が消費者金融と連携して貸金業者を紹介する。今までこれを認めてきた政府のあり方は間違いなのです。
 国民の税金を投入して救済した都市銀行は史上最高の利益をあげました。日銀のゼロ金利政策と、徹底したサービスの削減で利益を膨らませたのです。それなのに法人税はゼロなのです。法人税制を優遇した反面、消費活動の主役であるサラリーマンの個人税制は大幅な負担増となっているのです。このままでいいのでしょうか。今回の都市銀行の法人税ゼロは、税法上認められているとは言え、矛盾を感じてしまいます。この点を指摘しないではいられません。
 銀行は不良債権処理が終ったからと、史上最高のボーナスを出すと言われています。今までの金融再生の経緯を辿れば、国民へのサービスを後回しにして最高のボーナスを出すなど、一般常識では考えられません。これが罷り通る背景には、金融庁をはじめとする旧大蔵省から都市銀行に23人もの役人が天下っていることがあげられます。さらに都市銀行から消費者金融には75人もが天下っていることもわかりました。国民の税金までつぎ込んで助けた金融機関は利用者の味方なのか、それとも消費者金融の味方なのか。この点もただしていかなければ、日本の金融システムは改善されていきません。
「儲かれば何でもあり」の考えが消費者金融に絡む自殺者の増加にもつながり、勝ち組・負け組の社会現象をもたらす一因にもなってしまったのです。是正していくべきです。

 

少数意見を汲み取る政治が必要

 郵政公社は手紙、小包などの郵便事業が実質赤字になるとの見通しを立てました。予測されていたことであり、私たち民主党が主張し続けた「過疎地切り捨て」の心配が現実味をおびてきたのです。小泉さんは昨年の衆院選で民営化に反対する候補者に刺客を送り込むなどの徹底ぶりで、反対勢力を非情なまでに一掃しましたが、その舌の根も乾かぬうちに、今度は復党を認めるとか。終始一貫しているようで、実はまったく筋が通っていないのが小泉改革であり、場当たり的な今の自民党政治なのです。政治の基本は生活者の目線で弱者をなくし、社会生活に安心安定をもたらすことです。
 民主主義とは少数意見でも、そこに日が当たるようにしていかなければなりません。ところが少数意見が切り捨てられる傾向が、特に郵政民営化から決定的になってきたように思うのです。小泉さんの行った「イエス」「ノー」の二者択一政治が議会制民主主義を大きく変えてしまったのです。弱者の少数意見にも配慮が必要です。これを法律に生かしていかなければならないと思うのです。
 また、給食費を払わない、また、払えない人たちが各都道府県に増えていることが明らかになりました。NHKの受信料の未払い問題も法的措置がとられることになりそうですが、払えない人が払える状況をつくり出すことが政治の役目なのです。
 景気回復の遅れで倒産件数は増え、所得は伸びない。社会モラルの低下で暮らしのルールが守れない。次々と現れるこのような社会現象は何が原因なのか。お年寄りなど弱者の立場に立って、少数意見を的確に汲み取ることのできる政治の実現を政府に強く要望していかなくてはなりません。