教育基本法改正
タウンミーティングの「やらせ質問」は政府与党の謀略
拙速な改正は国を駄目にする
憲法改正に準ずる大切な教育基本法改正案が衆議院で強行採決され、参議院に送られました。民主党にとっても、現行の基本法案は変えなければならないとの立場から、政府与党案に不十分な教育行政の責任の所在、首長の権限強化、教育委員会の見直し、地域・保護者・学校の自主性の尊重、そして生命の尊さ、宗教心の大切さについてを謳った独自の「日本国教育基本法改正案」を提出しています。政府与党案に欠けた部分を補完した優れた内容となっているのです。
改正案の成立をみるには十分に議論を重ね、より良い方向となるように審議を尽くさなければなりません。このような時に教育現場のいじめや、いじめによる自殺問題が表面化してきました。さらには必修科目の未履修問題、情報を操作する政府主催のタウンミーティングの「やらせ質問」が発覚し、審議を進める委員会の様相が一変してしまったのです。政府与党は審議は尽くされたと強行採決に踏み切りましたが、現実に起きている教育の歪みがどこに起因するのか改めて審議し、結果如何では改正案の内容をもう一度慎重に検討を重ねる必要があるのです。それなのに、先週末に衆議院の通過を急ぎ参議院に送付したのは、安倍政権の最重要法案として審議の充実よりも今国会で何が何でも成立させたいとの勝手な思いだけが先行したからなのです。
政府与党は、骨格の基本法ができれば、いじめなど懸案の諸問題は個別に対処できるとの考えを示しています。これは間違いです。基本法が駄目なままでは、個別の法案がいいものになるはずはないのです。
「やらせ質問」で騙し続けた政府主催のタウンミーティング
教育基本法改正案を成立させるための地方公聴会や、小泉政権時の提案で始まった政府主催のタウンミーティングは多くの国民の意見を法案に反映させるためには有意義な催しであると理解していました。ところが、これが政府与党を利する材料に使われていたことがわかったのです。教育改革に関するタウンミーティングでは事前に文部科学省の考えをペーパーにまとめ、その上発言者も質問内容も決められて、質問者には謝礼まで払っていたのです。こんなことが小泉政権が進めた改革の中で、国民が何の疑いも持たない中、行われていたのです。
官僚の国民蔑視の体質、政府与党の馴れ合い政治が都合のいいように進められてきたのです。まさしく、このこと事態が日本の教育を歪めている一つの問題なのです。やらせのタウンミーティングは一回の開催に1000万円以上を費やすと言われています。小泉内閣の5年間で実施されたのが174回、総額約20億円(政府答弁)もの税金を使い、意見を有利に操作して与党寄りに国民を誘導し、騙し続けてきたのです。
政府与党の改正案に欠落する人を思いやる 「心の問題」
学校現場における一人ひとりの子どもたちの能力、知能を育てること、これが学校教育の大切なあり方であり、基本であることは言うまでもありません。この中で、改正案に「心の問題」を取り入れていくことも忘れてはならないのです。学校では友達を思いやる心を大切にしなければいけないのです。それがないから、今、いじめの問題が表面化してきているのだと思います。
また、教育は学校だけでなく、まず家庭内における躾を含めた諸問題に目を向けなければなりません。これを怠ったことで親子関係がおかしくなり、子への虐待、親への殺傷沙汰が日常茶飯事となってしまったのです。原因を究明しないまま、ただ基本法を改正すればいいというものではないのです。
社会教育にも問題があります。モラルやマナーの欠如です。たばこのポイ捨てが平気で行われたり、以前では当たり前の子どもやお年寄りなど、弱者への「いたわりの心」が消え失せてしまったのです。
教育改革は基本法改正だけの問題ではありません。官僚が小手先の操作で国民の意見を都合のいいように誘導し、政府与党案を思い通りに集約して成立させればいいというものではないのです。総合的な見地から教育のあり方を見直していけば、学校教育は、おのずと「心の問題」を疎かにしてはいけないことがわかってくるはずです。家庭教育、社会教育の必要性にも行き当たり、これらが三位一体となって、初めて真の教育改革が可能になるのです。いじめ、自殺が表面化した今だからこそ「心の問題」を含めた議論が必要になってきているのです。残念ながら、政府与党にはこの点を掘り下げようとする姿勢が感じられません。衆院に差し戻し、慎重且つ充分な審議を望みます。
首相は「新しい時代にふさわしい教育基本法改正は国民の声だ」と強調しています。ならば「やらせ質問」が国民の声とでも言うのでしょうか。米国占領下、長期戦略として組み立てられ、日本の教育を駄目にした教育基本法が61年経った今、新たに生まれ変わろうとしているのです。人を愛する心の問題、宗教心の問題、社会の仕組みの問題に対して、キチンと対応していくべきで、基本法成立をそんなに急ぐ必要はないのです。
私たち民主党も基本法改正が必要であることは認めています。私は外交や安全保障、そして教育は与党野党そんなに違いがあってはいけないと思っています。