闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

国政リポートNo.463
2006年9月25日

 

安倍・新政権に厳しく注文
老後の不安、格差拡大、アジア外交の問題解決に期待

 民主党は政権奪取に向けて、第2次小沢新体制のスタートとなりました。一方自民党も安倍新体制の誕生となりました。とりあえず安倍新総裁の誕生をお祝い申し上げます。志し半ばで病に倒れた父、晋太郎氏の意志を継いで念願の総裁の座を手にされたことは喜ばしいことです。しかしながら喜んでばかりはいられません。小泉首相の女房役、官房長官であった安倍総裁は、格差社会が広がる中で「再チャレンジ構想」を打ち出しましたが、そもそも再生可能な社会を壊していったのは小泉政権の5年間だったのです。この状況をしっかりと理解して欲しいと思います。
 政府は大企業や大手都市銀行には税制面で優遇し、また財政援助も真っ先に行ってきました。そのお陰で、大手都市銀行は公的資金によって不良債権を処理し、前代未聞のゼロ金利政策で空前の利益をもたらしました。一方、中小企業への十分な支援策もないままに貸し渋りを続け、その代わりに消費者金融がグレーゾーンの高利で貸付けを行う、いびつな金融システムをつくり出してしまいました。安倍総裁には、その責任を十分に受け止めて、反省して貰わなくてはなりません。
 いまだ景気が不安定な時期に、国民の多くが頼りにしている国民金融公庫、商工中金、中小企業金融公庫など、政府系金融機関の廃止が決まりました。この厳しい時期、中小企業が頼りとする政府系金融の廃止が正しい政策なのか、慎重に検討すべきだと思います。安倍総裁は小泉さんと一緒になって、今の再生不可能な状況をつくり出した張本人です。今度は再生可能な社会をつくるという。これには矛盾と戸惑いを感じてなりません。
 安倍さんは「美しい国へ」というスローガンを掲げました。日出ずる国・日本は改めていうまでもなく、元々美しい国です。産業の発展に伴い大気汚染、水質汚濁、そして環境破壊、これらに国、地方行政が適切に取り組んできたのでしょうか。また、グローバル化を進める中で人を思い、地域を思い、国を思う清らかで美しい日本人の心が、市場原理主義の導入で様変わりしてしまいました。儲かれば何でもあり、道徳心、モラルの欠如がさまざまな形で社会問題化しています。共に助け合う日本人の美しい心が消え失せて、ギスギスした関係だけが目立つようになってしまったのです。これらの問題を元通りに戻せるというのでしょうか。
 歳出削減のために、ただ公共事業を減らせばいいと、必要なものまで絞り込んでしまいました。例えば都市部の道路整備は大気汚染、環境対策の面から必要です。さらに交通渋滞による経済ロスは年間20兆円にも及ぶと試算されています。このことから考えても、不必要なところの道路整備を行うより、渋滞緩和に必要な首都圏の圏央道や第2東名の整備を続けるべきです。
 また、電柱や道路標識が林立し、車椅子が安心して通れない歩道がいたるところに存在します。バリアフリーの整備も十分ではありません。地震に対する整備も万全ではありません。電柱を地下化するための共同溝建設を積極的に進めていくべきです。ハコモノといわれる公共事業から、福祉や災害対策の視点に立った公共事業へと発想の転換が必要なのです。
 中越地震から2年が経つのに、いまだ復興がなされていない状況をみても、チグハグな国と地方の行政は一刻も早く解決していかなければなりません。また、小泉さんの辞任に合わせて、金融・財政改革を進めた竹中大臣、規制改革を進めたオリックス宮内会長が辞意を表しました。小泉首相の後ろ盾をなくしたからですが、国民には何の説明もなく、一方的な辞意は理解できません。と同時に無責任極まりないと言わざるをえません。
 今、日本は国家目標を立て、それに向かって、積極的な政治の取り組みが必要な時です。老後の不安を払しょくし、年金・医療・介護を中心とした福祉国家を目指していくことが大きな政治課題です。安倍総裁には憲法改正においても福祉国家としての理念を盛り込んで、国のあるべき姿を明確に示して欲しいのです。
 小泉さんの5年間で格差社会が固定化し老後の不安も拡大、アジア外交も冷え切ったままです。小泉改革で生じた陰の部分の修復が本当に実現できるのか、新総裁に期待しつつ、その政治手腕を厳しく見極める必要が私たちにはあるのです。