毎日、悲惨な事件が相次いでいます。親が子を虐待し、子が親を殺害する。また同級生を殺めたり飲酒運転による交通事故で幼い子どもの命が奪われる。節操のない企業買収も続いています。いったいこの国はどうなってしまったのでしょう。このように乱れた状況をつくり出した責任は政治にあります。国民の暮らしに成果主義、市場原理主義を取り入れ、それを追いかけた結果、競争社会に馴染めない人が多く出てしまいました。将来への不安が心の中に渦巻いて何らかの悪影響が、信じられない事件へとつながっている、その関連性は否定できません。
今の日本に欠けている思いやりと共生の精神、社会規範、道徳心など、もう一度、人と人が支え合う社会とは如何にあるべきかを、原点に立ち返って考え直してみる必要があるのではないでしょうか。
暗い世相に 社会不安
親王誕生 明るい報せ
殺伐とした暗い世の中で「紀子さま男児ご出産」の明るいニュースがもたらされました。男児ご出産によって、心配された皇位継承問題はひとまず棚上げされることになりましたが、この問題については安定的継承のために、女性天皇やその子の女系天皇を認める皇室典範の改正案が今年の通常国会に提出される予定になっていました。
典範改正については、皇位が男系で維持されてきたことを重んじる反対派と時代の流れに沿った女系容認論の賛成派との間で賛否を二分する形となり、この時173人の国会議員が反対の署名を行ったほどです。
小泉首相の諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」が一年足らずの拙速な議論で女系容認の結論を出したことへの批判が与党内で渦巻き、一時は小泉政権にとって致命的な法案の採決になるのではとの声が聞かれていました。その最中の2月7日、紀子さまご懐妊の報せが入ったのです。首相にとってはまさに天の助けとしか言いようがない朗報だったのです。
有識者会議で導き出された結論は、あまりに拙速で、国民的議論も不十分なものでした。政治を超えた日本の伝統、文化、歴史観は一年足らずの議論で安易に下すべきものではありません。将来にわたって心配される継承問題です。憲法で定められた日本国の象徴である天皇制をもう一度その精神を学びつつ、議論を深め、叡知を働かせながら国民のすべてが納得できる結論を導きだす必要があるのではないでしょうか。
銀行の貸し渋り、減らず
格差社会が広がる中で、年収200万円以下、預金ゼロ世帯が増え続けています。小泉首相の5年間で70万人の生活保護世帯が105万人にまで膨れ上がっています。自殺者も8年連続3万人を超え、特にこの5年間は平均すると3万2000人を数えて自殺者は確実に増えているのです。その中でも中小企業経営者など、何らかの経済苦によるものが3分の1を占めています。
土地の担保価値が上向いているにもかかわらず追加担保を要求される。滞りなく返済を続けているのに突然融資を打ち切られる。これは大手企業の不良債権処理が一巡し、いよいよ地方の中小銀行をはじめとする中小零細企業への不良債権の選別が強められてきたからなのです。この状況が続けば、今後中小零細企業の倒産、個人破産が増えてくることは間違いありません。
銀行からはカネが借りられず、返済を強要される。この動きが消費者金融に走らざるをえない状況をつくり出しているのです。
灰色金利、撤廃の徹底を
大手都市銀行は消費者金融との関係を深め、銀行の自動支払いコーナーには消費者金融の支払機を設置するまでになってしまいました。今では支払機は取り払われていると聞きますが、これなど、どう考えても正常とは言えません。業者寄りの安易な金融行政が問題を抱える多重債務者を容認することにもつながっています。
金融庁から貸金業規制法の改正案が提示されました。グレーゾーンと言われる金利を廃止しようとするものですが、短期、小口融資に関しては年28%の高金利を特例で認める内容になっています。金融庁から金融機関へ天下る、あるいは官公庁から消費者金融へ天下る、この状況で借り手側の制度見直しなどできません。抜本改革にほど遠い、貸し手側に配慮した法案がつくられてしまったのです。金融担当の後藤田正純政務官も抗議の辞意を表明していますが、当然です。今の金融システムからは金利の上限は15%程度に留めおくべきです。
借り手の死亡で消費者金融が受取った生命保険は約4万件、そのうち自殺による債権回収が、平成17年度に約3600件もあることがわかりました。生命保険を受けとる仕組みを借り手が気づかず、同意もないままに保険契約がされていた信じられない事例もありました。
銀行はゼロ金利で史上最高の利益をあげています。不良債権を国民の税金である公的資金で賄いました。このことを思うなら金融機関は弱者救済の社会的責任を十分に考慮すべきです。特に大手都市銀行の行員一人ひとりがこの問題をしっかり受けとめて、血が通う対応をして欲しいのです。しかし、未だその兆しが感じられません。中小零細企業への金融対策の解決なくして、自民党総裁候補が掲げる「再チャレンジ構想」など、実現できるはずはないのです。