闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

国政リポートNo.459
2006年7月31日

 

米国圧力
食の安全脅かす輸入牛肉の再開

● 盟友の小泉首相とブッシュ米大統領、この二人の個人的絆(?)は固いものかも知れません。しかし、日米関係となると話は別、両国の関係はそれほど強固なものではありません。米国から毎年日本に突きつけられる「日米政策協議」、次から次へと様々な要望を押し付けられています。郵政民営化もそのひとつ、また会社法もしかりです。
 「政策協議」の他にも沖縄の基地縮小に伴うグアム移転など、五月に合意した在日米軍再編で、なぜ日本が二〜三兆円にものぼると試算される費用を負担しなければならないのか。小泉首相は安全確保のための「必要経費」と受けとめているようですが、米軍基地のために日本の予算を使うのは日本が独立国家ではなく、米国の五十二番目の州ではないかとの錯覚さえ起こさせます。 
 北朝鮮のミサイル発射問題では国連安保理の制裁決議で当初、日米がお互いに協調関係をとって北朝鮮に圧力をかける。あるいは中国、ロシアの拒否権行使も構わずに制裁を課すというものでした。それがいつの間にか米国は中国、ロシアに配慮して採決を延期させてしまいました。「日本は米国にハシゴを外された」と外務省の幹部がぼやいたともいわれているくらいなのです。
 北朝鮮のミサイル発射は、結局は金融制裁による米国圧力への反発であり、その後中国も同じような制裁を課していたことが明らかになりました。このような動きはすべてブッシュ大統領の盟友である小泉首相を蚊帳の外に置いて進められていたのです。
 日本の国連常任理事国入りでも、米国は日本に対してはじめは擁護する立場でした。しかし理事国入りは時期尚早だとして、現実には空振りに終わっています。私たち民主党の小沢代表は「小泉首相がブッシュ大統領のご機嫌取りをしても日米の絆は深まらない」と指摘しています。その通りです。当たり前のことですが、米国は自らの国益に沿って動く。どうも小泉首相はブッシュ大統領を喜ばせてさえいれば、すべての外交は大丈夫、日本は安泰だと思っているようなのです。
 大統領専用機エアフォースワンに乗せられて、プレスリー邸を案内されての破格の待遇に有頂天になり、またサンクトペテルブルクでのサミットで、盟友のブッシュ大統領から「はしゃぎ過ぎだ」とたしなめられる。このようでは、国際社会の中で日本の元首としての資質を疑わざるをえません。劇場型パフォーマンスの首相には、まったく困ったものです。

● 米国産牛肉が輸入再開によって半年ぶりに販売されることになりました。今回の輸入再開は二度に渡る輸入停止を経てのものですが、国内産の牛肉は厳しく全頭検査をしておきながら、米国産輸入牛肉には米国圧力で譲歩する。これでは食の安全性が保てず、納得できる対応とはいえません。
 そもそもは米国側の違反が発端の今回の輸入停止措置。しかし、米国は日本の輸入基準とする二十ヶ月以下の牛を三十ヶ月にせよなどと、条件の見直しに向けて協議に応じるよう既に要請してきており、政治的圧力を一向に緩めようとしていないのです。
 本来、国民のための政治であるものが、次から次と米国の国益だけを考えたやり方に、なぜ日本は譲歩しなければいけないのでしょうか。牛肉の安全性の点検が十分行われないままに、輸入再開を求める米国側の圧力に屈してしまった自民党部会と政府。今回の決定に対しては食の安全を軽視した安易な政治判断だと断じざるをえません。
 米国国内の現在の検査態勢で安全性が十分確保されているかなどを調べる必要があります。私たち民主党では「輸入対象となった食肉処理施設を訪れて、引き続き作業を視察するとともに、米国農務省の担当者から直接話を聞いてBSEの病原体が蓄積しやすい特定危険部位が確実に除去されているかなど、安全性確認のための調査団を派遣する必要がある」と考えています。

● むしろ今、日本で急がなければいけないのは毎年訪れる豪雨、台風シーズンへの防災対策です。今回の長野や九州方面の大雨に対する被害で多くの国民が苦しんでいます。被災地に小泉首相が自ら出向き、現地のみなさんを励まし、ねぎらいのことばがあっても然るべきと思うのですが、そういうものがまったくありません。大雨の被害は、これからも心配されます。被災は大雨だけが原因なのか、具体的な対策が十分に行われているかなど、チェックする必要があります。
 ブッシュ大統領との蜜月関係にうつつをぬかす時間があるのなら、被災地に思いを馳せるべきです。また小泉首相が思うほど日米関係は良好でないのも事実です。北東アジア外交をもっと大切にしていかなければ結果的に日本は何処の国からも相手にされず、国益を損なうことになりかねないのです。