闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

国政リポートNo.458
2006年7月17日

 

北朝鮮には強い制裁決議で臨め
非難決議では不十分、入港禁止、送金停止など、与野党一体となった取り組みを

 五日未明、世界の平和と安定を脅かす北朝鮮による七発のミサイル発射がありました。まさしく狂気の沙汰としか言いようがありません。ミサイル発射に対し、国連安保理では北朝鮮への武力行使と経済制裁を含まない非難決議が全会一致で採択されました。
 ミサイル発射は北朝鮮の党、改革派、軍による勢力争いのなかで起き、軍部が最優先される「先軍政治」の影響が強く滲み出たものとなっています。米国の独立記念日に合わせた暴挙は、米国の金融制裁が北朝鮮経済に大きな打撃を与えているからなのです。そして、北朝鮮にとっては米国との二国間協議を行い、金正日・独裁体制を維持するための確約を得たいとの強い要望があるのです。
 武力行使と経済制裁を含む当初の制裁決議案に対し中国、ロシアからは賛同が得られず、むしろ、制裁決議には「日米両国だけが先行している」と非難されるほどでした。小泉首相の「日米同盟を強固なものにすれば、すべて良し」とする米国一辺倒の外交姿勢が中国・ロシアのかたくなな対応となって表われています。国連の常任、非常任理事国すべてが賛成に回る採択案であることは最も望ましいことですが、日米、特に日本が主張して譲らない国連憲章七章の制裁措置を含む決議案は、あらゆることを後回しにしてでも最優先にすべきでした。一歩譲った修正案が全会一致で採択された今でも、その思いは変わりません。北朝鮮に最も影響力を持つ中国・胡錦濤国家主席との話し合いができない状況をつくりだしてしまった小泉外交が北朝鮮をここまで増長させたのです。
 拉致、ミサイル、核問題は今まで六カ国協議の場で話し合われてきました。しかし、それを北朝鮮が無視し続けてきたことは六カ国協議そのものが事実上否定されたことになります。六カ国協議が世界平和のためにどんなに大切なものか、中国もロシアも真剣に受けとめてほしいのです。六カ国協議の場に北朝鮮を復帰させることを名目に、制裁決議案を骨抜きにされたのでは、何にもなりません。六カ国協議の役割において、中国・ロシアとも、北朝鮮に対してもっと強い姿勢で臨むべきではないかと思うのです。
 拉致問題への誠意も見せず、「人道的援助」を錦の御旗に支援をあおぎ、麻薬、ニセ札までつくる一方で、核開発、ミサイル発射などの蛮行を繰り返す金正日。平壌宣言も破られてしまった今、北朝鮮への対応は与野党を超えた一丸となった取り組みが必要なのです。
 中国・ロシアが反対しても駄目なものは駄目、白黒ハッキリさせて臨んでいくことが、日本外交の足下を見透かされないためには必要なのです。こんな折り、北朝鮮のミサイル発射で額賀防衛庁長官が「敵基地攻撃発言」を行い国内外に波紋を広げてしまいました。攻撃用兵器の保有まで踏み込んだ発言は、中国との信頼関係が途絶えているところにさらに拍車をかけ、「専守防衛」に徹する日本への誤解を生む結果となってしまったのです。日本は全面的に戦争を放棄しています。核武装もしないことは憲法上でも明らかです。防衛庁長官の不用意な発言は慎まなければなりませんが、その前に、日本の平和憲法を改正しなければ額賀発言が無理なことを世界中に理解しておいてもらわなければなりません。日本の立場が諸外国に誤って伝わってしまう状況を、五年間続いた小泉首相の断絶外交がつくりだしてしまったのです。
 小沢代表が中国を訪問し、小泉首相が成しえなかった胡錦濤国家首席はじめ、中国首脳との会談を実現させました。代表は日・米・中の三角形の関係について「日米を基軸に考えることは大切だが、それは三角形の一辺にすぎない。中国をはじめとする北東アジア外交も、等しく他の一辺にならなくてはならない。日本の外交にとっては等距離外交の位置づけが大切だ」との主旨を述べています。片寄った外交には問題があることを、今回の国連における中国・ロシアの日本への反応でハッキリ分かったことと思います。

ゼロ金利解除・中小零細企業の実態も注視せよ

 日銀は五年四ヶ月続けたゼロ金利を解除しました。異例の金融政策に終止符を打つことになるわけですが、私はかねてから、金利三%、物価上昇三%、経済成長三%のトリプルスリーがバランスのとれた経済成長であり経済運営だと主張してきました。金利ゼロなど世界中何処の国にもありません。金利〇・二五%ではまだ不十分ですが今回の金利見直しは一応評価できることです。
 反面、心配されることは、日銀短観では企業の景況感や設備投資意欲の高まりで日本経済は回復していると発表していることです。ゼロ金利解除もこの流れを受けてのものと思われますが、実態経済は日銀や政府が発表するほど楽観できる状態ではありません。実は、日銀の調査は大企業・製造業の業況判断指数によるもので、資本金一億円未満の中小・零細企業、特に二千万円未満の企業は調査対象になっていないのです。
 大企業は一九九〇年の水準を上回るまでに回復し、最高の利益をあげています。一方、従業員数で全体の七割以上を占める中小・零細企業の苦しい状況は何ら変わっていません。大企業の動向だけで景気判断を下しているところに政府の景気認識のズレが生じているのです。企業全体を注視すべきです。