通常国会が閉会し、五年続いた小泉政権が事実上終わりを告げようとしています。この間に日本経済は大きな変化をきたしました。政府・小泉首相は「貯蓄から投資へ」と投資を奨励する流れをつくりだし、また「官から民へ」と、米国圧力による市場解放と競争原理を導入。その結果、急進的な規制改革が村上ファンドのような問題を引き起こすことになってしまいました。政府はマスコミと一緒になって「景気の回復感は全国に広がっている。イザナギ景気を上回る」と囃し立てています。しかし地元を回って感じることは実態のない景気回復です。年収二百万円以下の家庭が全体の十七・五%を占め、預蓄ゼロが二十三・八%にもなっています。小泉政権になってから、生活保護所帯も増加して百万世帯を超えています。自殺者も八年連続三万人超を数え、この五年間、減ることはありません。減ったと言われる倒産件数も、十七年度は八千七百五十九と前年度の五千八百八十七と比べて二千八百七十二件も増加しているのです。自主廃業を含めると、恐らく一万件を超えるのではと思われます。
また、中小・零細企業の資金繰りも相変わらずで、貸し渋り・貸しはがしは、形を変えて未だに続いています。消費者金融は大手都銀との連携を密にしながら、金利二十%から二十九・二%の、いわゆるグレーゾーンの範囲で多額の融資を行い、さらに官僚の天下りを受け入れて、系列化を進めるなどしています。銀行にだぶついている資金を消費者金融に融通して高利で貸し付ける、「儲かれば何でもあり」の仕組みをつくってきたのです。銀行の現金自動預け払い機が置かれた横に、消費者金融の自動契約機が置かれている、これが現実なのです。
格差拡大の定着をゆるすな
原油の高止まりで、鉄や石油関連素材が値上げされています。そのあおりは徐々に中小・零細企業にまで、しわ寄せとなって表れています。財政再建を掲げた政府・小泉政権は公共投資を大幅に削減してきました。その影響を電気、ガス、水道事業など建設関連企業がもろに受け、倒産、廃業で企業の数は最盛期の半分以下にまで減っているのです。それなのに国の借金は減るどころか増え続けています。このような状況で、景気回復の実感が湧いてくるはずがありません。
その一方、大企業は下請け企業への優越的地位を利用し値引きや支払条件を有利に変更するなど「協力」の名の下で「強要」を求めています。そして正規社員を減らし、派遣や契約社員の採用で経費や社会保障費等の負担を軽減し、利益を確保しているのです。
小泉政権の五年間に、弱いものと強いものとの立場の差が顕著に表れて、社会問題化していることは、経済協力開発機構(OECD)も認め、「日本は国際比較で見ると、もはや平等な国ではない」と、格差拡大の定着を懸念し、警告までしています。それなのに首相はこの程度の格差は仕方ないことと、一般の常識とかけ離れた見解を示しているのです。
政府は、景気回復への取り組みのはずだった不良債権処理が、結局は銀行救済策となり、強制的な資金回収の影響を受けた中小・零細企業への打撃は計り知れません。その上、家庭へ向かうべき利子は超低金利で三百四兆円が銀行救済に回ったと試算されています。これでは企業間、地域間、所得間格差など、不公平な格差社会ができ上がるのは当然です。その上、金利ゼロの政策を打ち出している日銀が、法に触れないとは言え総裁自らモラルを欠く投資を行い、高額なリターンを手にしていること自体不自然で、庶民感覚では到底考えられないことが起きているのです。
格差を拡大してきた小泉構造改革に不満が高まって「深刻な問題」と受けとめている国民は、実に八割近くに達していることが読売新聞の世論調査でわかりました。アメリカ型のグローバルスタンダードが極端な成果主義社会をつくりだし差別の拡大につながってしまったことは、首相が如何に言い訳しようとも確かなのです。所得の片寄りなどで富裕層と一部の勝ち組企業ができ、勝ち組の好況感をみて、それを景気回復だと強弁する政府。国民の可処分所得が減り続け、景気回復に至っていないのが実情なのです。
中・韓外交、まず話し合いの場を
小泉首相はカナダ、アメリカを訪問し最大の歓迎を受けました。しかし米国産牛肉、基地と米軍再編など、小泉、ブッシュとの盟友外交は問題がないのでしょうか。米国とのパートナーシップを築いていれば中国、韓国、ロシアとの問題は解決できるのでしょうか。北方四島返還は二島引き渡しで決着を図ろうと、ロシア側は立場を明確に示してくるなど、以前より厳しい環境になってしまいました。中国、韓国との冷政状態は靖国参拝で話し合いを持たなくなった首相にも問題があります。「米国だけに従順でいればいい」との首相の姿勢は間違っています。アメリカを基軸としながらも近隣外交を確かなものにして、世界に開かれた日本を構築していかなければなりません。そのためには、まず話し合いができる状況をつくりだすことです。
小沢代表、菅代表代行、鳩山幹事長の三人が中国を訪問し、今後の日中関係やアジア外交を真剣に話し合うことになっています。 私たちは公平で平和な社会を目指し、増税ではなく、むしろ減税政策と無駄遣い廃止の徹底的な行政の見直しで、国民の暮らしを変えていく必要があると提言しています。