闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

国政リポートNo.456
2006年6月19日

 

国を滅ぼす社会道徳の乱れ

 日本社会は今、モラルの欠如、規範の乱れがいわれています。その中で日銀総裁の不適切な投資資金の拠出が明らかになりました。金融の番人であり政策決定の場にある公人の資産公開を徹底すべきです。首相の任命責任が問われていますが、それ以前の問題です。儲かれば何でもあり、責任者のモグラ叩きばかりでは、根本的な解決にはつながりません。早急に改めなければ、愛すべき日本を自ら滅ぼすことになってしまいます。

明確な国家戦略を示せ

● 第一六四通常国会が閉会しました。小泉首相の最後となる国会は、問題山積のままとなりました。憲法改正では国民の理解がようやく得られるようになりましたが、前提となる国民投票法も、また国家百年の計をなす教育基本法への取り組みも、国の根幹をなす重要案件はすべて先送りされてしまいました。年金改革では既に老後の安心が先送りされてしまっています。社会保険庁解体、年金の一元化がなぜできないのか、国会の場を離れて現場での動きを見れば、国民の怒りが伝わってくるのがわかります。

● 小泉政権のこの一年は、自民・与党の数の勢いで何でもありの国会運営となってしまいました。民主党は国民の立場で、官僚支配の自民党政治にしっかりと対峙していかなくてはなりません。そのような中で、議員立法で提出された自殺対策基本法、北朝鮮人権法、ガン対策基本法が成立しました。どれも民主党が積極的に法案化をすすめてきたものばかりです。これらが成立したことは評価できると思っています。

● 五年間の小泉政権からは、郵政民営化の掛け声だけで、将来をどうするのか、国家ビジョンが見えてきません。重要課題には国家目標を明確にし、それに対する戦略があり具体的な取り組みが必要です。ところが国家目標をどうするかの戦略がまったく足りないのです。だから中小・零細企業は苦しい思いをしているのです。今は苦しいけれど、明日、来年、再来年、そして十年後にはこうなるという姿が明確に示されていれば、痛みの後には快適な暮らしがくると、期待のもとに国民の多くは小泉改革を信じて我慢できたかも知れません。ところが五年経っても負担は増え、まったくの手探り状態がいつまでも続いて、逆に悪くなっているのです。国家の将来像が示されることなく、その場限りの再建策で切り抜けているのが、実は小泉政権の国会運営の姿だったのです。

● 国内経済を見ると小泉内閣の五年間で景気が回復したといわれますが、日本経済は良くなるどころか年収二百万円以下の家庭が増え、企業間格差、地域間格差と合わせて、すべてにおいて弱者と強者が二極化現象となって表れています。この状況で景気が良くなったといえるのでしょうか。
 首相は国民の税金で大銀行の救済策をとり続けてきました。そして貯蓄から投資へと、マネーゲームで市場の活性化を進めてきたのです。政府のとった政策は競争原理、市場万能主義の実践であり、その結果拝金主義が生まれてしまいました。勝ち組・負け組がでてもおかしくありません。中小・零細企業は大企業を相手に簡単に勝てるものではないのです。「格差社会の拡大」は小泉改革の弊害となって生まれてしまったのです。
 党派を越えて政治の力でこの問題をどう解決するか、国民の暮らしをどう守るかが大切です。その主導権は時の内閣である小泉自民党政権にあります。自民党が長い間政権にあって、政・官癒着の中で政治を動かしてきたところに問題があるのです。

● 銀行の不良債権処理は一応決着をみることになりました。これは 預金に金利をつけないゼロ金利政策を進め、中小・零細企業への貸し渋り・貸しはがしを続けるなど国民の負担から生まれたものだったのです。その結果、高利で貸し出す消費者金融にカネが回り本来あってはならない金融の仕組みができあがり、社会問題化してしまいました。
 また、政府は増税政策を進めてきました。五人に一人が六十歳以上になろうとしている中で定率減税が廃止され、高齢者の特別控除もなくなりました。介護保険料も負担増となりました。このようなさまざまな税負担によって、収入がなくても減税がなくなったために年金生活者にとっては市民・県民税の負担は四〜五倍にも膨れ上がってしまったのです。地域を歩いて、行政だけが潤う負担増に、怒りの声があがっているのを感じています。

● 一方、外交面では米国追従型の姿勢が際立つものとなってしまいました。首相の任期中だけ良しとする思いつき外交は、中・長期にわたる国家戦力が描けない状態です。靖国問題が絡み、これによって対中国、韓国との関係がこじれ、結果として国益を損なうことになってしまいました。米国は今、日本を飛び越して、むしろ対中関係に重きを置こうとしているのです。日本にとってこのような状況に懸念を持たない訳にはいきません。

● 基地移転問題でも、米国は日米安保の枠を越え、自衛隊を組み込んだ世界戦略の前線基地としての再編を考えています。沖縄基地のグアム移転は中国脅威論に対する備えと同時に、逆に将来を見越して中国に配慮を見せるなど、台湾を含めた地域での微妙な駆け引きが行われています。いずれにしても、日本が米国のための軍事的な重要拠点となって生まれ変わろうとしているのは確かです。米軍再編で基地の強化につながる移転問題には、はっきり「イエス・ノー」をいえる対等な同盟国になるべきなのです。