国政リポートNo.450
2006年3月27日
国を救う高齢者の社会参加
六十五歳までの雇用を企業に義務づける改正高齢者雇用安定法が施行されます。この法案について、私は国会で何度も取り挙げ「少子高齢化の中で社会の担い手として高齢者に頼ろうとすれば何らかの対策が必要だ。そのためには高齢者が元気で働き続けることができる生涯現役社会をつくるべきだ」と主張してきました。平均寿命が延びる中で、社会保障費の増加を抑制する点からも是非必要です。社会の活力を高める意味からも定年制の延長は早期に実現すべき施策なのです。
また、公務員の定年も問題です。無駄遣いの元凶である天下りや、談合の背景には公務員の実質五十三歳定年制というピラミッド型人事による問題点があります。仕事もそこそこに、若い時から天下り先を確保しなければならないようなピラミッド型の人事制度を円筒型に改めるべきなのです。
高齢社会を迎え、定年の延長と併せて働き手の減少を食い止める手立てが議論されていますが、そのひとつに外国人労働者への依存があります。しかし国内の労働力不足を補うための外国人労働者の受け入れについては、その環境が十分に成熟していません。そしてまた、海外への企業進出なども挙げられてきましたが、し烈な国際競争に勝ち残るために安価で豊富な働き手を海外に求めたことで産業の空洞化が起き、却って国内産業の衰退を招く結果となってしまいました。資源の乏しい日本にとって、付加価値を高めるためのモノづくりの基本が失われ、日本古来の文化・伝統までもが危機的状態に陥ってしまったのです。
バブル崩壊後、再起をかけて辿ってきた道筋の中で、安定・安心の国づくりには高齢者の知識と経験、高い技術力が必要なことを改めて思い知らされました。すべての高齢者が働き続けることのできる環境が、今回の法施行を機に広がりを見せていかなければならないのです。
繰り返される介護の負担増
高齢者の働く環境が確保されていこうとする中で、四月から介護保険料が値上げになります。三年に一度の見直しで、特に六十五歳以上の保険料率の引上げは〇三年度の十三パーセントを大きく上回り、二十四パーセントとなりました。全国平均で八百円増の月額四千九十円にもなります。特に年金受給者にとっては大きな痛手です。
増税策がめじろ押しの中、介護保険料の値上げは国民年金に占める割合も大きく生活の支えである年金は僅かな「あめ玉年金」になってしまいます。今後、医療費の値上げも行われてきます。さみだれ式の負担増は健全な福祉国家のあり方に逆行するものです。「収入は減る、年金も減額され負担だけが増える」では老後の不安は解消していきません。無駄の多い特定財源の見直し、あるいは目的税化を含めた年金・医療・介護のあり方を年金の一元化を含めて改革していかなければ、いつまでたっても負担増だけが繰り返されることになってしまいます。
大切な「もったいない」の精神
二〇〇一年に施行され、実施までに猶予期間が設けられていた電気用品安全法の不備が指摘されています。この法律は、四月から安全を保障する
マークなしの中古家電製品の販売ができなくなるというものです。九九年の通常国会で電気事業法などの十法案と一緒に審議したために、議論の対象になりませんでした。条文にも中古品扱いには触れられておらず、中古家電の多くを販売できなくなることが具体的にリサイクル業者に知らされたのは二月になってからだったのです。私の下にも「何とかして」との意見が寄せられています。中古家電の安全性確保は勿論のことですが、事前の周知徹底も成されない準備不足の法律は欠陥法案といわざるを得ません。
日本は安くて良いもの、長持ちする商品をつくりだす文化を育ててきました。今回の法律は、まだ機能を十分に果たしているにも関わらず古いから、安全性に懸念があるからと、新製品の買い替えを奨励し、いたずらに使い捨てを促進するようなものになってしまっています。これでは「もったいない」という日本の文化が失われてしまいます。「もったいない」は外国でも「MOTTAINAI」として浸透してきているくらいなのです。
本来、法律とは少ないほうが良く、法律でがんじがらめにすることですべてが解決するものでもありません。役人の思いつきで法の網が被せられ、そして一度決めたものは二度と変えようとしない。このような発想を持ち続ける限り、まともな政治は望めません。苦境に立たされた中小小売店の現場がどうなっているか、もっと関心を払うべきです。直ちにこの法律は凍結し、産廃・環境問題と併せて総合的につくり直すべきです。
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