闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

国政リポートNo.447
2006年2月20日

 

「進まぬ特殊法人改革」 天下りの実態 更に悪化

補助金 十年で二倍に

 公務員の天下り先、特殊法人・公益法人等に五兆五千億円の補助金が支出されていることが、民主党要請による衆院調査局の調査で明らかになりました。
 特殊法人改革は私が十年来、取組んでいる大きな政治課題です。今では特殊法人の無駄な実態が分かってきましたが、当時はその存在を知る人はあまりいませんでした。
「特殊法人の倒産」と題した本を出版し、無駄、非効率を指摘したのもこの時からです。

四千法人に五・五兆円

 私は平成九年の第百四十回国会の予算委員会で「特殊法人等への補助はどのくらいあるのか」と、政府にただした経緯があります。平成九年度では特殊法人に二兆五百二十四億円、国所管の公益法人に二千四百七十七億円、その他交付金として千四百二十一億円が支出されていることが、政府答弁で分かりました。ところが十年経った今、補助金の額は減るどころか却って膨れ上がり、二倍
以上になってしまっているのです。
  の数で補助金が決まるとまで言われています。例えば二兆千五百億円が支出されている文科省所管の特殊法人等には、天下っている   の数が現役より多いという驚くべき実態も明らかになりました。十年前は認可法人等の外郭団体を含めると約二万六千団体あると言われていました。今回、十六の中央省庁が所管する三千九百団体が調査対象となっていますが、そこに役職員として二万人以上が天下っていることもわかりました。十年経っても特殊法人改革は一向に進まず却って無駄遣いに充てられる額は多くなっているのです。自民党政権下、特殊法人改革は不可能と断じざるをえません。

財政の悪化招く法人存続

 特殊法人改革で、小泉総理が道路公団の民営化を行いました。しかし、当初の計画道路の建設は無駄と分かっていながらそのまま温存されてしまいました。さらに四つに民営化された道路会社には、今までの公団理事が新会社の役員として横滑りして、役員の数は以前より増えているのです。
 天下りは今回の防衛施設庁のように、官製談合ができやすい環境もつくりだしています。また、九州から横浜勤務となった道路公団責任者が横浜の歩道橋をつくるのに、自らの天下り先を確保しておこうと、今までつながりのある九州の業者を連れてきた例があることも耳にしています。当然、効率が悪くコスト高にもなってしまいます。

自民に特殊法人改革はできない

 そもそも、役人の多くは天下りを「悪」とは考えていないと言います。むしろ「専門性を持った人材を、別の場所で活用することは悪いことではない」と考え、「天下り規制は仕事をするなと言うに等しい」と強弁していると言います。複数の会社の入・退職を繰り返す「渡り」で高額な退職金を手にし、その上ロクに仕事もせず高給を食む。こうした役人の身勝手な論理の上に成り立つ天下りを、改革断行と言いながら小泉総理が放置してきたことは事実です。これが国家財政の悪化を招く大きな原因ともなっているのです。
 天下りをなくすには抜け穴だらけの国家公務員法を改正しなければなりません。しかし政府・自民党は天下り禁止を現行の二年から五年間に延長する民主党の規制強化案には耳を貸そうとしないのです。その理由は「これ以上の規制強化は憲法が保障する職業選択の自由に抵触する」との政府見解があるからです。だれもが納得する仕事と適正な給与であれば文句は言いません。そうでないところに問題があるのです。それを役人の論理で片づけてしまう。本気で改革にメスをいれて来なかった橋本、小渕、森、そして小泉の歴代自民党政権に責任があります。
 役人の天下り天国は、長く続く自民党政権下でつくりだされてきました。談合、天下り問題の解決にはアメリカやイギリスのように政権交代が必要なのです。政権交代が実現すれば、前の政権がやっていたことがオープンになり、政・官癒着を防ぎ、役人に対する厳しいチェック機能も働きます。
 政権交代できないのは、国民がその選択をしてこなかったからです。その大きな原因は野党の力不足です。改革を実現するには私たち野党である民主党の責任は重大です。政権交代可能な二大政党制の実現が国家国民を救います。国家財政の厳しい今こそ、天下り禁止を徹底しなければならないのです。