闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

国政リポートNo.592
2011年8月29日

 

          「民主党代表選に際し緊急提言」

        被災した東日本を「日本列島再建計画」の中枢に据えて


 

●景気、円高、中小企業対策

 サブプライムローンに端を発した世界同時不況は日本経済を直撃し、デフレ経済に加え、直面する超円高に歯止めが掛からない状態です。資源が乏しいなかで、モノづくり産業による輸出依存状態の日本経済は壊滅的な打撃となっています。政府、日銀は円高に対し、投機的動きの監視を強め、直ちに円高阻止の確固たる市場へのメッセージ、日米間による協調介入、量的緩和の実行など、あらゆる手立ての金融政策に打ってでなければなりません。また、金融機関による民間への融資にも協力を要請していきます。
 日本経済を支えているのは中小企業の底力です。その、中小企業が元気をとり戻すことを第一と考えます。特に政府系金融へも中小企業への資金繰り悪化に積極的な対応を指示していきます。
  内閣府の推計では東日本大震災で約17兆円が失われたと言われています。被害は東日本一帯の一次産業にとどまらず、モノづくり企業にも大きな打撃となって表れています。
 東日本は製造業の集積地です。サプライチェーン(分業・供給)の分断で企業の海外移転が心配されるなか、韓国、中国などは免税など破格の待遇で日本の企業誘致を進めています。
 産業の空洞化を起こさせないよう、あらゆる手立てを講じていかなければなりません。輸出競争力を高めていくために、農業を含めたTPPへ、国民的合意を図りながらの参加は避けて通れないと思います。併せてカロリーベースで40%となった食料自給率は先進国では見られない最低水準です。これを当面70%まで引き上げて、食料輸入国から輸出国へと、強い農、林、漁業を作り上げていかなければなりません。
 

 

●復旧・復興、消費税対策

 東日本大震災で福島県浪江町の私の実家は津波にさらわれ、未だに親族7人が行方不明のままです。原子力発電所の事故で、浪江町に帰るのが許されない状況が続いています。
 その福島からは度々陳情を受け、また、7月12日に開かれた日比谷野外音楽堂での町民の決起集会では叱責と苦境を訴える被災者の悲痛な声を受け、実家を失った私にもその気持ちが痛いほど伝わってきました。
 集会にでていたのは民主党では私ただひとりです。参加議員の少なさ、無関心さに、被災された町民からは政治家に対する不信感が伝わってくるのがわかりました。残念でなりません。
 震災からの復旧・復興を急がなければなりません。また、福島第1原子力発電所事故の収束なくして日本の復興はあり得ません。被災した地域の優遇税制、規制緩和を実施し、思い切った特区構想のもとで、総合的な住宅建設、公共事業など、超法規的な取り組みが必要だと考えます。
 この機会に権限と財源をつけて地方の自主権と経済活力を高め、30兆円規模の予算をかけて集中的に投資が行える環境づくりを、まず東日本を中心に整えていきます。
 今後5年間、東日本を 「日本列島再建計画」の中枢に位置づけ、復旧・復興計画と新規事業によって新たな雇用が生まれるようにしていきます。
 財源の捻出には一刻も早い景気回復による税収が一番ですが、それまでは復興債の発行や、復興増税に踏み込んでいかなければならないと思いますが、慎重な見極めが必要になってきます。
 一方、政府は「税と社会保障の一体改革」の検討会議で消費税を2010年代半ばまでに段階的に10%まで引き上げる案を閣議了解していますが、この状況下で景気回復を無視した、逆進性が高い消費税の増税はあってはならないと断言しておきます。私は、将来、社会保障に限った目的消費税としての増税は否定するものではありませんが、消費税増税への取り組みは「景気と税と社会保障の一体改革」と捉えています。とにかく、財政再建には、まず景気回復です。

 

●外交・安全保障

 震災が起きてすぐにアメリカ軍は三陸沖に空母を配し、「トモダチ作戦」を敢行し、大規模な救援活動を展開しました。これほど心強く感じたことはありません。
 日本の外交、安全保障は日米関係を基軸にしながら中国、韓国などと北東アジアの安定に努めていかなければなりません。ただ、最近の中国の軍事力増強による広範囲な行動に対しては懸念しています。
 四方を海に囲まれた日本は海洋資源が豊富に存在します。中国とは海底油田、尖閣問題、そして韓国、ロシアとも領有権をめぐって問題が生じています。言うべきことは強く主張していく、そのような外交姿勢が必要だと思います。
 北朝鮮の挑発行為には制裁措置を含め断固とした対応と、引き続いて拉致問題の解決に努力していきます。

 

●エネルギー対策

 今日の日本の発展をみたとき、これまでのエネルギー政策は間違っていなかったと思います。ただ、原子力エネルギーは危険性を有しながらも、安全だとの神話のもとに進められてきてしまいました。
 私は衆院経済産業委員長として欧州3カ国にエネルギーの実態調査に赴き、フランスでは、事故は起こり得るとの前提にたって原子力行政が行なわれていることがわかりました。以前から主張していた原子力安全・保安院と原子力安全委員会の原子力行政の不備は直していきます。
 安定的な電力供給は経済活動に欠かせません。原子力は過渡的エネルギーと捉え、原子力が新エネルギーに置き替わるまでの間、一時的かつ補完的役割として化石燃料に頼りながらも、将来的には再生可能な太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの自然エネルギーへと、開発を進めていかなければならないと思います。
 また、蓄電池技術の開発と商品化に向けて積極的な支援態勢を整えていきます。
 日本の国土の7割は森林に囲まれています。森林管理を怠ってきた結果、局地的豪雨による災害が多発するようになってしまいました。これを防ぐための樹木の枝払いからでた間伐材はバイオマス発電に供することができます。CO2の吸収弁として環境保全にも役立ち、林業再生への取り組みは日本復活に向けた成長戦略となります。
 これらのエネルギー改革は日本を立て直す最も重要な柱です。日本再生の中核に据えて、国をあげての投資環境を整え、強力に押し進めていきます。ここに新規雇用を確保していきます。

 

●教育・年金

 資源の乏しい日本にとってモノづくり、人づくりは国家政策の基本であり、その人づくりには先行投資が不可欠です。
 教育は国家百年の計を成すもの。人口が減少傾向にある今、子育て、そして教育に十分な予算を振り向けていきます。
 年々増え続ける社会保障費には、景気回復のもと、目的消費税としての消費税増税で賄うことを考えますが、まずは私たち国会議員の定数削減と公務員数の削減、そして行政のムダを徹底的にただすことです。
 あわせて社会保険料の徴収漏れ、法人の加入漏れなど、歳入庁の創設によって明らかにし、財源を確保していきます。