闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

国政リポートNo.531
2009年5月5日


新型インフルエンザが猛威を振るっています。病原菌まん延によって国民の暮らしと、経済への影響が心配です。情報収集と緊急連絡網など、国、自治体には万全の態勢で臨んでほしいと思います

 

   「 新エネルギー政策と、知的財産権で世界戦略を描け」




●弱者まで浸透の景気対策を

 5月の連休は16日間の休みをとる企業もあります。嬉しいはずの大型連休も喜ぶ状態にはありません。不況の煽りを受けた企業が連休にかけて生産調整を行なっているからです。この間は無給休暇で、事実上給与所得は2、3割カットされていることになります。費用のかかる遠出を避けて近場で過ごしたり、また、身の回りの整理に時間を費やすなど、カネをかけない連休を選択せざるをえない状況となっています。厳しい状況下、政府、政治家は何をしているのでしょう。海外視察と称して、実際には遊びに行くようでは困ります。そのようなときにこそ、地域の状況を見て回り、国民の日々の暮らしを的確に把握することが大切なのです。
 麻生総理は就任1年足らずの間に中国首脳との会談を3回も行いました。外国首脳との会談は確かに重要ですが、それにも増して困窮を続ける国内の経済情勢に本気で対応しているでしょうか。大企業はともかく、中小零細企業の置かれた苦しい立場をもっと理解すべきです。
 総理は東京・大田区の町工場などを訪れました。しかし形式だけの視察では中小製造業の本当の苦境を理解することはできません。本予算もそこそこに、大借金の補正予算を組んで、日本版グリーン・ニューディール構想を掲げ、特に太陽光発電、省エネ家電、エコカーなど、環境ビジネスに力を入れた景気刺激策を打ちだしました。間違ってはいませんが、「川の水が、川上から川下へと流れるが如く、大企業が潤えば、やがては中小零細企業にまで恩恵が及ぶ」と、かつての小泉、竹中さんが執ってきた大企業中心の格差が広がる景気対策では困ります。大企業と違い、体力に乏しい中小零細企業が今日明日の糧を求めてどんなに苦労をしているか、そのことを頭の中に入れた景気対策を執っていかなければならないはずです。

 

●国の産業を守る特許権

 既に、日本企業は中国への輸出入なくして経営が成り立たないところまできています。中国はこの状態を見透かすかのように、日本ばかりではなく世界から輸入を許可するI T製品の中核情報を強制的に開示するよう求めてきました。中国の求めに応じ製品の頭脳ともいえるソフトウエアの設計図を明らかにすれば、莫大な費用と歳月をかけて築きあげた企業所有のノウハウが簡単に流出し、損失は計り知れません。その上、場合によっては軍事転用も可能となり、日本の安全を脅かす恐れにもつながりかねません。
 情報開示の中国政府の考え方は基本的に間違っています。世界各国が所有する特許や独自の技術は知的財産権として守られるべきで、これは世界全体の共通認識です。中国は日本との互恵関係を口にしていますが、ソフトウエアの情報開示は日中間の信頼関係にまで踏み込む大変な問題です。現時点でも、日本の模造製品がつくられて、その被害は年間に9兆円にも及ぶといわれています。
 先般、行われた中国の自動車ショーで、世界の名車ロールスロイスを真似た車が出品されました。日本の高級車も特許や意匠が侵害されています。国際ルールに反する行為が野放しでは中国に対する信頼は大きく失墜してしまいます。

 

●海外への依存度を軽減  

 かつて、日本企業が中国に生産拠点を移したとき、企業業績が軌道に乗った頃合いを見計らって、中国政府はみなし課税をかけ、日本企業の追い出しにかかった経緯があります。中国では当たり前とする「朝令暮改」は国際社会では通用しないことをはっきり理解させておかないと、日中間だけでなく世界経済に大きな支障をきたすことになります。
 したたかな中国のこと、無理難題を突きつける目的は他にあるかも知れません。日本政府としては、どんなことがあっても今回の中国の開示制度を認めるべきではありません。これを交換条件にするようなやり方に対しても、受け身に回るのではなく、想像できうるすべての交渉事には国際間で連携をとりながら、断固厳しい態度で応じなければなりません。
 経済は生きものです。景気減速を受け残念ながら100万人のリストラが進行中です。特許や特殊技術が国力を高めて雇用につながることは明らかです。厳しい中で、知的財産権が如何に大切なものかを見直すには絶好の機会です。
 エネルギー問題でも、資源の乏しい日本が産油国のいいなりで、原油高騰となって大きな打撃を受けています。そうならないためにも、脱・化石燃料の政策を進め、新エネルギーによる産業革命で一刻も早く海外依存度の高い経済を立て直し、国力を上げて内需拡大につなげていくことが本格的な景気回復には必要なのです。