闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

2003.3.3

日本の危機管理体制を急がなければならない。
イラク、北朝鮮緊張が高まる中、
軍事アナリストの小川和久氏を招いて
勉強会を開催した。


国際水準からみた日本の安全保障、危機管理

日本の国を守る、社会の安全を守る。これがなければ景気の善し悪しを議論する余裕もない。国会審議もできない。安全なくして繁栄はない。国家社会の安全に全力を尽くさなければならない。
 安全保障にせよ、危機管理にせよ、世界のどこに出しても通用するものでなくては、すべて不合格ということを明確に自覚されていなければならない。しかし、日本人は自分たちの物差しで測り、読み間違いをしてきた。島国という恵まれた環境のもとで備わらなかったことがある。それは危機に対するセンスである。地続きの国で育った人達と比べると著しく欠けている。これが日本人の唯一最大の欠点であるかも知れない。それを自覚して乗り越える努力をしていかないと、せっかく築き上げてきた経済力も一瞬のうちに失いかねない。

 対イラクに対して日本は経済的な戦略がない。アメリカを筆頭にイギリス、フランス、そして中国もロシアも世界有数の埋蔵量を誇るイラクの石油採掘権を狙って、水面下のし烈なビジネス合戦を繰りひろげている。ビッグビジネスチャンスを目の前にして、日本はスタート地点から既に脱落してしまっている。外国のビジネスマンたちは、いつ攻撃が始まるか分からない今も、イラクの石油を巡り、イラク国内に留まって人脈を着々と築いている。

 大きなマネーが動くビッグビジネスのかけ引きが行われていることを、日本国民はもっと知るべきで、国民の税金を戦後のイラク復興にいくら支出する、貢献をどうする、それにはいくらかかるなど、こんなことばかりを考えていて、国家としての経済戦略が見えてこない。アメリカを始め世界の主要国は国益を最重点に置いて国家戦力を立てている。日本政府も国益とは何かを考えて行動していかなければならない。

 また、北朝鮮に関しては脅威論が先行している。「ミサイルが飛んできて東京を火の海にすると言っている、大変だ。そうしたら日本はどうすればいい」とマスコミでは連日不安をかき立てる報道ばかりだ。しかし、北朝鮮が持っている軍備は戦車も飛行機も年代物で殆ど脅威にはならない。

 北朝鮮は日本に向けてノドンミサイルを百発配備していると言う。しかし、北朝鮮が直面している驚異の方が大きいはずだ。アメリカが日本に配置している軍事力の中で横須賀にイージス艦が6隻ある。それには、海面スレスレをはうように飛行しピンポイント攻撃のできるトマホーク巡航ミサイルが標準装備されている。それが北朝鮮を向いている。射程は1300から1500キロ、これが現実だ。

 北朝鮮はミサイルにしても大量破壊兵器にしても、日本上空で効果的に使用する技術は持っていない。むしろ心配なのは日本国内に入り込んでの工作活動や特殊部隊によるテロ行為だ。油断、あなどりはいけないが、いたずらに心配して騒ぎ立てることもない。ただ、あらゆることを想定して、充分な訓練と備えは必要だ。そのことは政府も認識しておかなくてはならない。

 日本政府は必要以上の不安を与えまいとするためか、イラクにとって日本がアメリカ、イギリスに続く、第三番目の敵対国になっていることを国民に知らせていない。日本国民はもっと危機意識を自覚しなければならない。
 地下鉄サリン事件は、日本では単なる事件として扱われている。しかし、この考え方は国際的には通用しない。世界ではこの事件は、初めて大量破壊兵器であるサリンが使われたテロ事件として扱われている。それほど日本政府の危機意識は薄い。日本はテロ行為をやらせないための力を備えていかなければならない。

 アメリカが一番恐れているのは日米安保条約の破棄だ。アメリカにとって日本は戦略的根拠地と位置づけられ、同盟国でも最重要国となっている。これは北朝鮮と隣り合わせる韓国の比ではない。アメリカは日本での基地展開ができることによって、自国のハワイから喜望峰まで、軍事的に地球の半分以上を掌握できる。その上、ハイテク技術を満載したイージス艦がもし故障した場合、その心臓部を修理できるのはアメリカ本国と日本しかない。今はハイテク技術は日本の方が上と言われているくらいだ。日米同盟なくしてはアメリカは世界一の超大国とはなりえない。これらのことを念頭においてアメリカと付きあえば、おのずと日本が置かれた重要な立場がわかってくるはずだ。

 国としての大枠の抑止力を持つ。軍事的システムと政治的システム。この両輪を機能させられない国は一人前ではない。自衛隊の防衛力、アメリカのミサイル防衛(MD)を持つこともある。しかし、おおもとで大切なのは政治的システムを機能させて懸念される動きを絶対にさせないということだ。それが日米安保である。

 「日本に対する攻撃はアメリカに対する攻撃と見なす」とアーミテージが言った。これは日本人が知らないだけで、アメリカは一貫して言い続けている。ソ連にも中国にも有効だった。これは北朝鮮に対しても有効だ。アメリカにとっては自国のために日本列島をどんなことがあっても押さえておかなければならない。朝鮮労働党にも伝え続け、ここのところは分かっているはずだ。北朝鮮は、これを分かっての上でのギリギリの外交を続けてきている。

 北朝鮮を絶対に暴発させないという強い決意のもとに、政治的システムをより強く機能させ、日本が掲げる旗印にふさわしい軍事的システムで議論ができなければいけない。ここまでいって、始めて国際水準を満たした日本の安全保障ということになる。

 日本の技術、戦略的地理条件、エネルギーの確保など、これらの総合した条件を国家戦力の重要要素として日本は言うべきことは言う。そして本当の国益とは何か。国際国家として通用し、平和ボケと言われない日本をつくりだすために、政府、国民、そして国民を代表する政治家が一丸となって日本の経済発展と国家国民の生命・財産を自ら守っていく術を構築していかなければならない。日本が平和で豊かな国であり続けるために。

15年3月3日、第3回横浜会議より