闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

04 経営者の会


 BIS規制

 グローバリゼーションとかグローバルスタンダードと言う言葉を、よく聞くようになりました。グローバルは地球規模、全世界規模のこと。スタンダードは標準です。つまりグローバルスタンダードとは、世界標準、国際基準と言うことになります。
 BIS規制というのも、よく聞くと思います。BISはバンク・フォー・インターナショナル・スツルメンツで国際決済銀行の略称です。日本の銀行も国際業務を行なうということで国際的な統一規制が義務づけられました。
 このために銀行の経営の健全性を示す自己資本比率が8%以上とすることが決められたのです。自己資本が大きければ大きいほど、倒産の危険性が薄いというわけです。
 ところが日本は、バブルが弾けてから地価と株価の下落で資産価値が下がり、デフレ経済を招いてしまいました。銀行がお客さんから担保として預かっていた株や土地の優良債権もデフレの進行とともに含み益が減り、ドンドン不良化していってしまったのです。このために銀行の経営内容が悪くなって、企業へ融資をしなくなったり、貸し出し資金の回収をするようになったのです。
 銀行は経営を維持するために大型合併でメガバンクを誕生させて、何とか金融の危機を乗り切ろうと必死になっています。しかし、却ってこのことで力の弱い中小・零細企業が一番の犠牲者になってしまいました。

 銀行は破たんの心配がない、いわゆる健全な取引先から、破たんの可能性がある取引先まで、お客さんを融資の返済状況に応じて自動的に「正常先」「要注意先」「破たん懸念先」「実質破たん先」「破たん先」の五段階に選別したのです。そして中小・零細企業は業績も悪くはなく、返済が滞っていなくても、それだけですべて破たん懸念先にランクして、不良債権回収先としてリストアップしてしまったのです。これは個人、零細中小企業の融資枠解消と、貸し出しの回収が銀行にとって一番扱いやすく、これにより倒産しても小規模ゆえに社会的影響が少ないと判断されているからなのです。
 整理回収機構によるものすごい買いたたきの実態と、悲惨な状況も、僕の耳に入ってきました。何とか助けて、と相談を受けたことも数えきれないくらいです。
 また僕は、デフレ下でのペイオフ解除は一貫して反対してきました。実施するにはタイミングが悪すぎると思っています。 結局、ペイオフ解禁は延期されましたが、金融庁は金融不安を起こさないために、ペイオフ解除を前に大手行の統合と駄目な金融機関を整理して、信金信組を六十近くも破たんさせてしまったのです。
 反対に統合で生まれたメガバンクには公的資金を用意し、経営の危ない大企業は債権放棄策がとられて救済していったのです。大銀行、大企業は潰れると社会的影響が大きいとの理由です。それでは中小企業は影響が少ないから潰れてもいいと言うことなのでしょうか、この考えは納得ができません。
 地域に根ざす金融機関は地場産業に密着し、中小企業の経営を支えています。その信金信組がBIS規制をクリアしているかどうかを判断する厳しい金融庁の検査マニュアルで破たんし、中小企業は資金調達の道が閉ざされてしまいました。
 
 信金信組、そして都銀、地銀はそれぞれ役割が違っていいと思うのです。それを大手銀行と一律の検査マニュアルで評価して信金信組を整理していくことは、はっきり言って問題があります。中小企業にとって信金信組の破たんは死活問題になってしまうと思うのです。知らないうちに自社の債権が整理回収機構に回され、キチンと返済していても破たん懸念先になり、融資が受けられなくなっているのです。
 ペイオフ解除で金融機関の淘汰が進むことは、結果的には中小企業の倒産を招き、国民の暮らしを窮地に追い込むことになってしまいます。ペイオフが解禁されれば、預金が大手行に集中することで、信金信組の経営がさらに圧迫され、破たんが増えることも予想しました。ペイオフ解禁は預金保護と自己責任だけが言われていますが、中小企業の経営を左右する問題であることを、国はもっと認識する必要があると思います。

  経済産業委員会で神奈川県信用金庫協会の服部会長がペイオフ延期を求める意見陳述を行ないました。陳述で「このままでは第二地銀や信金信組から大手行や郵貯に資金が流出し、中小零細企業は資金調達の道が断たれ、地域経済が混乱を起こす」と悲痛な胸の内を明かしたのです。
 僕も、そのとき現場を歩いて中小企業経営者の心配が日に日に高まっていることを痛切に感じました。資金の流れを加速するペイオフの完全実施は、株価下落で自己資本比率が低下し、危うさを増す大手行を救う、国の究極のシナリオとしか言いようがないと思ったのです。、中小企業にしわ寄せがくるような国の政策には断固反対の決意を固めたのでした。

 

 BIS規制の検査マニュアルに関する質問主意書 (平成十四年六月 提出)

 BIS規制による金融庁の一斉検査が行われた。検査は大手都市銀行(以下、「都銀」という)と、地方銀行・信用金庫・信用組合(以下、「信金信組」という)ともに、一律の検査マニュアルが適用された。また、ペイオフ解禁の影響もあって、都銀とは明らかに役割が異なる信金信組の破たんが相次いだ。そして、これに関連して中小企業には信金信組の貸し渋りが及び、融資の行き詰まりによる企業倒産、経営者の自殺などが社会問題化している。
 都銀と一律の検査マニュアルの適用は信金信組にとって非常に厳しい基準であり、一律の基準は、信金信組の社会的役割とその必要性を否定するものにつながる。金融庁の行った一律の検査で、昨年度三月期決算で信金信組の半分までが最終赤字に追い込まれた。都銀と異なり、信金信組の取引先は中小企業が殆どであり、貸し出し先の制限もあり、赤字の企業が多い。このため一律の検査マニュアルの適用は信金信組にとって大幅な引当金の積み増しが必要とされる。これは非常に厳しいハードルであり、その結果、六十近い信金信組が破たんに陥った原因になっている。引当金の積み増しは、中小企業に融資したくても事実上融資ができない状況をつくり出してしまった。
 地方は、もともとモノづくりが中心であり地元の金融機関と共に発展を遂げてきた。地方経済の担い手として、我が国の中小企業が占める割合は九九%以上に達する。近年、特にIT不況による地方工場の撤退や公共事業の削減で苦しむ建設業者、また老舗企業の行き詰まりも目立つ中で、信金信組の存在は資金調達や経営相談での大きな支えとなってきた。
 しかし、今回の一律の検査マニュアルによる信金信組の相次ぐ破たんは、地場を支え、日本経済を支える中小企業の経営を立ち行かなくし、倒産しなくてもいい企業まで倒産させてしまった。これは明らかに政府の経済政策とは相反するものである。
 さらに深刻な状況として、四月から解禁のペイオフによる都銀への預金シフトの動きが挙げられる。預金者の金融機関選別の動きが加速していることは当然の成り行きとしても、異常ともいえる預金シフトはペイオフを実施した先進国には過去見られない現象だと言う。経営基盤の弱い信金信組にとっては先行き予測できない状態が続く。中小企業にとって取引先金融機関の先行き不安は、我が事として深刻に受けとめざるを得ない。
 政府は中小企業向け融資に対する配慮から、信金信組への「検査マニュアルの弾力運用」「意見申し出制度」などを考慮したとされるが、これは十分に機能しているのか。
 従って、以下質問する。

 一、BIS規制の検査マニュアル見直しについて
 BIS規制は国際的統一基準であり、都銀に対しては欧米の規制を適用されてしかるべきである。しかし都銀と役割が明らかに異なる信金信組に対して同じ検査マニュアルを適用するのは如何なものか。二重構造の検査基準を認めるべきではないか。

 二、ペイオフ見直しについて
 二の一、ペイオフにより預金が都銀に集中している。このために信金信組の預金流出が止まらずに厳しい状況になっている。また、ゼロ金利や現下の厳しい経済状況からペイオフの本格的導入への見直しを考えるべきではないか。

 二の二、米国ではペイオフによる預金保護の上限額を引き上げようとする動きがあると言う。我が国も例えば一千万円を二千万円にするなど、都銀への過剰な預金シフトを防ぐために上限額の引き上げを考慮すべきではないか。

 二の三、都銀と信金信組におけるペイオフの上限額に差をつけることで、信金信組の預金の流出を防ぐ手立てを中小企業対策の一環として考慮すべきではないか。
右質問する。

 

 衆議院議員田中慶秋君提出
 BIS規制の検査マニュアルに関する質問に対する答弁書

 一について
 金融機関においては、適切な資産査定等を行うことにより、その健全性を確保することが極めて重要である。このことは、すべての金融機関に共通する原則であると考えている。
 一方、こうした原則の下で、金融検査マニュアル(平成十一年金検第百七十七号金融監督庁長官決定)においては、金融機関の規模や特性を十分踏まえ、その機械的画一的な運用に陥らないよう配慮することとする旨繰り返し明記するとともに、特に、信用金庫、信用組合等の主な取引先である中小企業、零細企業等に対する債権について、その特殊性を総合的に勘案して資産査定を行うこととしているところである。
 従って、信用金庫、信用組合等についての別の検査マニュアルを作成することは考えていない。

 二の一について
 平成十五年三月末に流動性預金全額保護の特例措置の終了が予定されていることについては、まずは、それに向けて金融機関が経営の健全性を高めていくことが重要であると考えている。金融庁においても、今後とも預金の動向を注視していくとともに、引き続き、より強力な金融システムの構築を図るべく最善の努力をしてまいりたい。

 二の二について
 預金保険制度の保険金支払限度額については、「特例措置終了後の預金保険制度及び金融機関の破綻処理のあり方について」(平成十一年十二月二十一日金融審議会答申)で「現行の保険金支払限度額は一千万円となっているが、我が国の一人当たりの平均貯蓄残高や諸外国の水準、保険料負担の増加等を勘案すると、この水準を引き上げる必要はないと考える。」と指摘されており、現時点で保険金支払限度額を引き上げる理由はないと考えているが、今後の社会経済情勢の変化に応じ、必要があれば、適切に対処していくべきものと考えている。

 二の三について
 預金保険制度の趣旨は、少額預金者を保護し、もって信用秩序の維持を図ることであり、このような制度の趣旨にかんがみると、金融機関の業態に着目して、都市銀行についての保険金支払限度額と信用金庫、信用組合等についての保険金支払限度額に差を設けることは、適当でないと考える。

2003年9月出版本「日本の進むべき道」より転載

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