闘い続ける 前・衆議院議員田中けいしゅう

04 経営者の会


 原子力発電  エネルギー政策

 石油などの化石燃料の大量消費で排出ガスが年々増加し、地球の温暖化現象が進んでいます。このまま行くと地球の生態系が崩れて、僕たちが住むことのできない地球になってしまうかも知れません。過去50年の間に南極周辺の平均気温が2.5度上昇し、大陸の氷が溶けだして巨大な氷山となって流れ出ていることが確認されています。
 また、太陽からの有害な紫外線を吸収するオゾン層の破壊も見られています。そうなると有害な紫外線をオゾン層が吸収することもできなくなり、直接地球に降り注ぎ、多量の紫外線を肌に受けることになります。紫外線は、シミや皮膚ガンを引き起こす原因となることがわかってきました。だから最近、日傘や日焼け止めクリームがよく売れています。

 僕たちの若いときは、夏には全身小麦色の肌になることが一種のファッションでした。どこの浜辺でも黒んぼ大会が開かれて、真っ黒になることを競い合いました。冬にはスキーで雪焼けするのがかっこよさの象徴でもあったのです。それが、いまでは安心して日焼けができなくなってしまいました。

 今年の梅雨は例年になく長く、寒さを感じる7月でした。僕は毎年、夏になると地域の人たちとのコミュニケーションを図るために「けいしゅう祭り」を開催しています。イベント盛りだくさん、夏の夜空を彩る打ち上げ花火などで、一日楽しく遊んでいただいています。今年は、祭りの前日まで夏らしからぬ天候が続き心配していましたが、「けいしゅう祭り」を待っていたかのように、当日から30度を超す猛暑となりました。稲の育成も心配されていただけに、例年の暑さが戻ったと、ホッとひと安心していました。ところが、その後の低温続き、日照不足でコメが不作となってしまいました。夏は夏らしく、暑くなければいけないと思います。

 今年の夏は、首都圏で停電が予測される心配がありました。それは工場や家庭に電気を送る東京電力の原子力発電所の原子炉内の炉心隔壁(シュラウド)などにひび割れがみつかり、これを隠して虚偽の報告をしていたことがわかったのです。これで東京電力にある17基の原発がすべて点検のために停止してしまいました。

 いま、日本のエネルギー資源の約八割は海外に依存しています。その中で日本の電力エネルギーの三分の一超は原子力発電に頼っています。家庭での電力の実に三分の一が原子力ということになるのです。
 地球温暖化防止条約で義務づけられている、京都議定書のCO2削減義務の達成や環境問題を考えると、現在、日本にとって原子力エネルギーはクリーンエネルギーとして最も有効な手段となっているのです。だからこそ原発は国民の安全と信頼を得なければならない。国の対応は、すべてにおいて後手に回っていると、僕は思うのです。
 
 企業と政治に対する信頼、国民と政治に対する信頼、行政に対する信頼が揺らいでいます。21世紀のエネルギー政策を支える原発の隠ぺい工作でも、東電側の企業責任だけが厳しく問われました。これに対して、ことが露呈してから現地調査に入る、国の検査側の原子力安全・保安院に問題がなかったのでしょうか。
 原発の不正記録は事業者の責任であることは確かですが、検査結果の虚偽報告が行われる素地をつくった要因は、国にもあると思います。このことを経済産業委員会で指摘しました。監督、規制する側の原子力安全・保安院では、52基の原子炉に対し約260人の検査体制で臨んでいました。これに対し、米国では103基の原子炉に2900人を配しています。安全管理への考え方が根本的に違うのです。

 僕は「規模に合わせて安全管理のために増員する。管理体制の強化を図ると同時に大臣の下に置かれる評価委員会は、国家行政組織法第三条に基づく委員会として、中立的な評価を行える独立機関として位置づける。また、原発には設置基準はあるが維持基準がないことが今回の問題を生んでいる。これらを早急に解決すると同時に、安全性を確かめた上で、小泉首相なり、平沼担当大臣自らが原発のある柏崎刈羽に出向き、地域住民にしっかり説明する義務がある」と、委員会で指摘しました。
 その後、僕の意見も聞き入れられて、これらの点が改善されることとなり、運転再開の安全制を説明するために平沼大臣が現地に赴いたことは、本当によかったと思っています。

 風力、太陽光、バイオなどの代替エネルギーの研究が進んでいますが、まだ十分ではありません。東京電力が、同社の事業が環境に与える影響をまとめた2003年版の「環境行動レポート」によると、東電が2002年度に排出した二酸化炭素(CO2)の量は、前年度比23%増の1億740万トン急増した、とあります。原発の停止で、石油火力発電所の発電量が増加したためです。東電の原発が全基停止したまま石油火力で代替すると、それだけでマレーシア一国分の原油需要に匹敵すると言われています。

 京都議定書の削減義務達成のためには、いまの段階では日本の原子力政策は欠かせないと思います。原発の隠ぺい工作で国民の信頼を失ったことは日本の基幹エネルギーとしての原子力政策がマイナスからのスタートとなってしまったことを意味しているのです。
 事業者側の歴代社長は責任をとっています。行政側の保安院長も責任を重く受けとめて欲しいと思い、僕は更迭処分が相当ではないかとの考えを経済産業委員会で示しましたが、戒告だけに終ってしまいました。国民にとっては公務員法の『戒告』の重さがどれほどなのか分かりませんが、公務員が範を垂れないと、国民の信頼を得ることはできません。僕は官僚国家が続く限り、官僚が責任をとらない体質は温存され続けると思っています。

 電気は貯えておくことができません。火力発電と、点検の済んだ原発を稼働させて、何とか今夏をしのぐことができました。今回の電力不足に備えて、工場を持つ企業は夜間の操業を高めたり、生産を首都圏以外にもっていく計画を立てたりと、大変な思いをしたようです。首都圏での停電は社会不安や甚大な経済損失が発生します。さらには、日本にとどまらず、国際社会に影響を及ぼす恐れもでてきます。
 昭和30年代までは、よく停電が起こりました。懐中電灯やロウソクは必需品で、どこの家庭にも備えてあったことを思い出します。いまでは、停電が当たり前の時代から、停電しないことが当たり前の時代になりました。電力の使用量も格段に増えて、その分暮らしも便利になりました。反面、地球環境が少しづつ変化して、破壊されてきていることを忘れてはならないと思います。
 原発は、将来へつなぐクリーンなエネルギーです。原発の運転再開に向け、保安院や電力会社は、安全対策には最大限の注意を払うことは当然です。そして、絶対に怠ってならないのは、地元市町村の十分な理解が得られる努力を続けていくことです。

 

 エネルギー政策と地球温暖化対策の実効性に関する質問主意書 (平成十四年五月 提出)

 京都議定書の承認を受けて、日本は九〇年比で温室効果ガスの六%削減が義務づけられることになった。しかし、日本の排出量は九〇年よりも七%ほど増えている。政府は産業部門、交通部門、市民生活部門と分野別にそれぞれ削減達成目標計画を定めているが、国会での審議も十分とは言えない。米国、ロシアの不参加に対する外交努力と国際交渉に関する決議もなく採択した。
 省エネで欧米より進んだ取り組みを見せている日本企業もあるが、全体として、温暖化対策で既に先行する欧州に比べて、我が国のエネルギー政策は十分とは言いがたい。京都議定書の大綱に示す数値目標を現実のものとして捉えているのか。我が国のエネルギー対策への取り組みの遅れが原因で達成不可能となるのではないか疑問視せざるを得ない。
 エネルギー政策と地球温暖化対策は、ただ単に啓発活動を目的とし、最終的には京都メカニズムで達成させればいいという安易な計画が根底に存在するのではないのか。
 従って、以下質問する。
 一、クリーンエネルギーについて
 温室効果ガス削減の柱に十年で原子力発電所十三基の推進計画が据えられている。しかし今までの経緯からして建設には約二十年が必要である。むしろ近年は社会事情等により、一基すらできないのが現実である。原発の建設について、政府は十年で十三基が可能との報告を提出しているが、社会情勢とくに住民の反対などに加えて、巨額な投資が必要となり十三基もの大量増設は不可能で、これから先の見通しは大変困難な状態である。天然ガスを使用した火力発電所を造るにも十年かかる。このことを考えても、原発十三基は具体性に乏しい計画ではないのか。

 二、代替エネルギーについて
 代替エネルギーとして新エネルギーである自然エネルギー、すなわち太陽、風力、そしてバイオマスなどが挙げられるが、現段階においてこれらがエネルギー供給源として原発や火力発電に匹敵する能力を引き出せるとは思えない。これらの状況からかんがみて、二〇〇八年から二〇一二年にかけての六%削減の目標は単なる目標値に終るのではないか。新エネルギーがどの程度寄与すると考えているのか。

 三、民生部門への情報公開について
 省エネルギー政策の国民への意識の徹底に当たっては、情報の伝達が欠かせない。この点についての具体性が示されているとは言いがたい。今のままでは民生部門での削減はそれほど期待できるものとは考えられない。今後、どのような措置を講じていくのか。

 四、排出権買い取り、森林吸収について
 目標が達成できなければ排出権の買い取りとなる。これは国民の税金である。結局は国民に負担をつけ回すことになる。かつて、日本はエコノミックアニマルと言われた。今回も排出権の買い取りで数字合わせをしようとしているのではないか。

 昨今の林野事業にも不安が残る。その中で、三部門が現実に即した、さらに踏み込んだ具体的削減計画を示す必要があるのではないか。大綱が示す実現性には疑問を呈さざるを得ない。どのように具体的措置を講じようとしているのか。
右質問する。

 

 衆議院議員田中慶秋君提出
 エネルギー政策と地球温暖化対策の実効性に関する質問に対する答弁書

 一について
 昨年七月の総合資源エネルギー調査会答申「今後のエネルギー政策について」においては、同答申に目標として示されている平成二十二年度における原子力発電による電力供給量は、同月以降、十基から十三基程度の原子力発電所の新増設を行なうことに対応するものであるとされている。
 本年、一月には、東北電力株式会社が女川原子力発電所第三号機の使用を開始したところであり、また、三基が現在建設中である。
 さらに、この建設中の三基を含め、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二十九条第一項に基づいて、電気事業者が、原子力発電所の立地に係る諸手続の進ちょく状況等を見極めた上で作成した平成十四年度供給計画においては、同年度から平成二十三年度までに、十基から十二基の原子力発電所の使用開始を見込んでいる。
 以上から、平成二十二年度における原子力発電による電力供給目標を達成するための十基から十三基程度の原子力発電所の新増設は、実現可能なものと認識している。

 二について
 気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書(以下「京都議定書」という。)において約束された我が国の温室効果ガス排出量の六%削減(以下「六%削減」という。)を達成するためには、地球温暖化対策を一層強力に推進していくことが重要である。
 地球温暖化対策推進大綱(平成十四年三月十九日地球温暖化対策推進本部決定。以下「大綱」という。)においては、温室効果ガス排出量について、現在の省エネルギー対策、新エネルギー対策、燃料転換、代替フロン等三ガスの排出抑制対策等を維待した場合、平成二十二年度に二酸化炭素換算で約十三億二千万トンとなることを見込んでおり、我が国の目標として、これを二酸化炭素換算で約十一億五千五百万トンにまで、約一億六千五百万トンを削減し、六%削減を達成することを掲げている。この目標の達成に向けては、現在行なっている対策を着実に実施するとともに、更なる省エネルギー対策、新エネルギー対策、燃料転換、代替フロン等三ガスの排出抑制対策等の追加対策を実施することとしている。新エネルギー対策については、同じく、大綱において、平成二十二年度に原油換算で千九百十万キロリットルを導入する目標を掲げており、これによる温室効果ガス排出削減量は、二酸化炭素換算で約三千四百万トンが見込まれ、省エネルギー対策、燃料転換、代替フロン等三ガスの排出抑制対策等を含めた追加対策全体による平成二十二年度の温室効果ガス排出削減見込量のうち約三割を占めているところである。

 三について
 省エネルギー対策については、国民一人一人の省エネルギー意識を喚起し、生活様式の変革を促すため、住宅や業務用ビルにおける冷房の適切な管理、事務所等における暑さをしのぎやすい服装の励行等について、国民に対する広報活動等を実施してきているところである。
 また、国民のエネルギーに対するコスト意識を向上させるため、エネルギーの使用量を消費者にとってのコストとして表示する、情報通信技術等を活用した機器の普及を促進しているところである。
 さらに、省エネルギー意識の醸成には、子供のころからの教育が重要であることから、全国の小中学校を対象に教材の提供、講師の派遣等を行う省エネルギー教育推進モデル校事業を推進しているところである。
 今後ともこのような政策を通じ、省エネルギーの取組に対する国民の一層の理解と協力を得られるよう努めてまいりたい。

 四について
 大綱においては、六%削減のため、温室効果ガスの種別等の区分ごとに目標を定め、これを達成していくこととしており、当該目標の達成が充分見込まれる場合については、こうした見込みに甘んずることなく、引き続き着実に対策を推進するとともに、今後一層の排出削減を進めるものとしている。また、京都メカニズム(京都議定書第六条一に規定する事業、京都議定書第十二条一に規定する低排出型の開発の制度及び京都議定書第十七条に規定する排出量取引をいう。)については、京都議定書の履行義務及び京都メカニズムが国内における温室効果ガス排出の抑制等に対して補足的であるとの原則を踏まえ、国際的動向を考慮しつつ、その活用について検討していくこととしている。
 また、大綱においては、エネルギー起源の二酸化炭素について、産業、民生及び運輸の各部門ごとに目安となる試算としての排出削減目標を定めている。さらに、大綱に定める各目標を達成するため、百種類を超える個々の対策について、導入目標量及び排出削減見込量を定量的に明らかにし、これらの対策を推進するための国等の施策を盛り込んでいる。また、平成十六年及び平成十九年に、対策の進ちょく状況及び温室効果ガスの排出状況等を定量的に評価し、その結果を踏まえ追加的な対策及び施策を講じていくこととしている。
 こうした方法によって、円滑かつ確実に六%削減を達成することができると考えている。

 

 原子力発電所新増設及び核燃料等の我が国のエネルギー政策と、
 二十一世紀の自動車産業のあり方に関する質問主意書 (平成十四年六月 提出)

 先般の「エネルギー政策と地球温暖化対策の実効性に関する質問主意書」の回答書に対して、今回、回答の問題点とさらなる質問をする。

 一、原子力発電所新増設について
 地球温暖化防止に対する基本的姿勢は現実面と理想面とに大きな乖離が見られるのではないか。原子力発電所が十基から十三基程度の新増設が可能とされているが、現在の社会事情を考えると難しいのではないか。例えば、福島の原発の新増設について見ると、町議会及び町長は推進していても福島県知事は昨年二月に原子力政策の見直し発言を行っている。地域住民の反発も強い。さらに、核燃料に対し負担増となる新たな税率変更が提示されている。このような環境下では当初計画の新増設は不可能な状態と思われる。
 今回の回答による平成二十二年度までの十基から十二基の原子力発電所の使用開始を見込んでいる点と、原子力発電による電力供給目標を達成するための十基から十三基程度の原子力発電所の新増設は、実現可能なものと認識しているとする政府の見通しは楽観的かつ妥当性を欠くものであり理解しかねる。実現可能とする根拠を明確に示せ。

 二、エネルギー政策におけるプルサーマル計画について
 プルサーマル計画に使用する使用済み核燃料のMOX燃料について、これは将来の原子力発電所を稼働させるのに最も効果的な燃料と認識している。しかし、このMOX燃料使用について、原子力発電所新増設の厳しい進捗状況と併せて、将来的見通しがたっていない。
 今回の回答では地球温暖化対策大綱において、温室効果ガス排出量についての六%削減目標の達成を、現在行っている排出抑制対策の着実な実施と追加対策の実施により達成可能としているが、この中にMOX燃料をエネルギー対策に組み込んでいるのか。エネルギー対策は総体的な目標値を示しているだけで個々の具体的施策が提示されていない。地球温暖化対策に対する回答は不十分である。

 三、新エネルギーによる自動車開発について
 エネルギー政策を論じる中に、自動車の排気ガスによる地球温暖化が挙げられる。排気ガスの問題は地球温暖化対策には避けて通れない。現在、我が国には七千五百万台を超える自動車があり、さらに二千万台超の自動二輪を有している。これらが排出するCO2は深刻な社会問題となっている。この問題点を解決する施策として電気、水素ガス等の新エネルギーによる新たな自動車の開発が進められ、一部には既に実用化をみている。
 新エネルギーによる自動車開発は国際間の競争が激しさを増してくることは充分に予測される。特に特許所有権の問題と産官学によるコラボレーションは欠かせない。
 二十一世紀の我が国の産業を鑑みたとき、技術革新が国の行く末を大きく左右することは明らかである。ITによる情報産業に重点を置くと同時に、国策として新エネルギーによる自動車開発の推進が産業界全体の後押しとなることは確実である。

 二十一世紀の技術革新と産業革命的役割を担う新たな自動車開発が、我が国の産業の空洞化対策に貢献してくるし、経済発展にも寄与していくことは間違いない。現に低公害エンジンの開発で、我が国の自動車メーカーは世界で優位性を発揮している。これに対し政府は全面的な支援策を講じていくべきである。
 以上エネルギー政策、地球温暖化対策に関連した技術革新が我が国には必要であることを示した。この点について、政府の取り組みと将来の見通しを如何に考えるか。
右質問する。

 

 衆議院議員田中慶秋君提出
 原子力発電所新増設及び核燃料等の我が国のエネルギー政策と、
 二十一世紀の自動車産業のあり方に関する質問に対する答弁書

 一について
 電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二十九条第一項に基づき電気事業者から届出のあった平成十四年度供給計画によれば、原子力発電所の使用開始時期は別表のとおりであり、同年度から平成二十二年度までに十基から十二基の原子力発電所の使用開始が見込まれているところである。
 また、別表に掲げた十二基の原子力発電所のうち、北海道電力泊第三号機、東北電力東通第一号機、中部電力浜岡第五号機、北陸電力志賀第二号機、中国電力島根第三号機及び電源開発大間の計六基が、それぞれ道県知事の同意を得た上で、電源開発促進法(昭和二十七年法律第二百八十三号)第一二条第一項に基づき、経済産業大臣が電源開発の円滑な実施を図るため必要な事項等を考慮し決定した電源開発基本計画に組み入れられている。これらのうち、東北電力東通第一号機、中部電力浜岡第五号機及び北陸電力志賀第二号機については、現在、建設中であり、北海道電力泊第三号機及び中国電力島根第一二号機については、現在、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第二十六条第一項による原子炉設置変更許可が申請され、経済産業省において審査を実施しているところである。
 さらに、右の六基以外についても、日本原子力発電敦賀第三号機及び第四号機を組み入れた新たな電源開発基本計画については、本年六月、資源エネルギー庁長官が福井県知事から同意を得、関係各省との協議を行なっているところであり、今後、総合資源エネルギー調査会の意見を聴き、決定する予定である。
 政府としては、右のような原子力発電所の立地に係る諸手続の進ちょく状況にかんがみ、本年一月に使用を開始した東北電力女川第三号機を含め、平成二十二年度における原子力発電による電力供給目標を達成するための十基から十三基程度の原子力発電所の新増設は、実現可能なものと認識している。
 原子力発電所の建設をめぐる立地地域の地元情勢については、一部に厳しいものがあることも事実であるが、地域の理解を得るべく、これまで電源地域の振興に係る交付金の活用や、原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法(平成十二年法律第百四十八号)に基づく特別措置により、地域住民の福祉の向上を図る等、立地地域振興等に関する各種施策を講じてきているところである。引き続き、原子力発電の安全性の確保に万全を期し、原子力発電の必要性及び安全性に関する国民の理解を求める活動や、原子力発電所の立地地域振興策等の取組を通じ、目標の実現に全力を挙げることとしている。

 二について
 地球温暖化対策推進大綱(平成十四年三月十九日地球温暖化対策推進本部決定。以下「大綱」という。)においては、エネルギー供給面における二酸化炭素排出量の削減対策の住の一つとして、原子力発電の推進を掲げ、限りあるウラン資源の有効利用を図るとともに、原子力発電所の長期安定的な運転継続を確保するため、核燃料サイクルについて、その研究開発も含め、国内における確立を着実に進めていくこととしている。その具体策の一つとして、ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料(以下「MOX燃料」という。)を使用するプルサーマルの着実な推進を盛り込んでいるところであり、MOX撚料利用は、大綱のエネルギー対策に組み込まれているものである。
 なお、現在、プルサーマルの実施に向けて、内閣官房副長官が主宰する関係府省の局長等を構成員とするプルサーマル連絡協議会が平成十三年八月に取りまとめた「中間的な取りまとめ」に基づき、国が前面に立った取組を行っており、一日も早い実現のため努力を重ねている。
 また、大綱においては、省エネルギー対策、新エネルギー対策、燃料転換等のエネルギー対策について、新エネルギーによる自動車(以下「クリーンエネルギー自動車」という。)の普及促進等百種類を超える個々の対策についての導入目標量及び排出削減見込量を定量的に明らかにし、これらの対策を推進するため、クリーンエネルギー自動車の導入を支援するための補助等の国等の施策を盛り込んでいる。

 三について
 二十一世紀にふさわしい環境負荷の小さい自動車社会を構築するとともに、環境・エネルギー問題に対応した技術革新を促すことで自動車産業を始めとする関連産業の国際競争力の強化を図るため、クリーンエネルギー自動車の開発・普及を推進していくことが重要であると認識している。
 政府においては、実用段階にあるクリーンエネルギー自動車の普及策として、原則としてすべての一般公用車をクリーンエネルギー自動車等の低公害車に切り替えることとするとともに、民間におけるクリーンエネルギー自動車の導入を支援するための補助、税制上の措置、金融支援等を実施している。
 また、次世代のクリーンエネルギー自動車の開発に関しては、乗用自動車については、燃料電池自動車の世界に先駆けた実用化を目指して、大規模な公道実証試験、性能評価手法等の標準化、規制の包括的な再点検等を実施するとともに、電気自動車用の高性能蓄電池の開発を行なっており、貨物自動車等については、従来の大型ディーゼル自動車に代替する自動車として、高効率天然ガス自動車、次世代ハイブリッド自動車等の開発を行なっている。
 政府としては、実用化・商用化に向けた技術開発を行なっている民間企業や、基礎的な研究を行なっている大学等の研究機関と適切な役割分担を図りつつ、産学官三者による情報の共有など相互の連携の下、クリーンエネルギー自動車の早期の開発・普及を実現することにより、環境・エネルギー問題への対応を図るとともに、自動車産業を始めとする関連産業の国際競争力の強化を目指してまいりたい。

2003年9月出版本「日本の進むべき道」より転載

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